一つの恋の……所業
ハワードは婚約者のメリッサからの愛の告白に戸惑っていた。
「貴方にも分るでしょう、愛する事の辛さが」
何も言えなかった、敢えて蓋をしたどうしようもない恋心を掘り返そうとしているのか。
「悪魔はそれを十分分かった上で私を脅し協力者にさせたのです」
「それはどう言う事だ」
「親友であるリリアナを心身共に追い詰め婚約破棄させる事に協力させられたのです」
「何だと」
「やらなければ、貴方を奪うと言われて」
「⋯⋯」
「貴方にはその方が良かったのでしょうけど」
「⋯⋯」
「ずっと親友の振りをしてスパイになる事を強要されリリアナのメンタルを崩壊させる手伝いをさせられました」
「⋯⋯」
「それに悪意のある噂を流す手伝いは貴方もなさったしね」
「はぁ?」
「城の女官達に喋りませんでしたか?悪魔の言う事を信じて」
「それは……確かに」
「城の中ではその噂が尾ひれを付けてあっという間に広がりました。ある事無い事」
「リリアナ嬢が飛び降りたのは⋯⋯」
こくんと頷き
「彼女は追い詰められていて随分と年上の好色な男に嫁がされることが決まり掛けていました。もしかしたら正式に決まったのかもしれません。そしてあの日、あの婚約パーティーの日に王城の部屋の荷物を引き払う様に通達が来たのです」
「⋯⋯」
「彼女は驚いたでしょう、登城してみたら婚約パーティーが開かれていたなんて」
「⋯⋯」
「多分、彼女は知らされていなかったと思います、いえ侯爵家もかしら?」
「⋯⋯」
「だって知ってたら流石に止めますでしょう?それともあの日彼女が呼び出されたのを家族は知らなかったか」
「私もリリアナ嬢を追い詰めた1人と言う事か」
「そうですわ、その通りです」
「ただ婚約パーティーは私ズル休みしましたので」
「そうだった、高熱が出たとか何とか」
メリッサは又クスクス笑った。
「そうそう、もしかして悪魔からお礼を言われませんでした?」
そうだ確かアリーシャは婚約パーティーの日⋯⋯。
『ハワード様のお蔭です、こんなに早く認めて頂けて。アリーシャとても感謝しておりますのよ』
あの日の言葉が頭を駆け巡った。
そしていきなり小窓からメリッサが言う。
「公爵領へ戻って頂戴」
馬車は公爵領へと進み始めた。
「このまま悪魔のところに行けばきっとろくでもない事をさせられます。貴方を守る為なのです」
「彼女は助けてと言って来たんだ」
「随分都合のいい懇願です事。普段は思い出しもしないのに」
ハワードの胸がキリキリ痛んだ。
そしてメリッサは爆弾を落とした。
「あぁ、そう言えば植物状態のリリアナの監視も命令されたのですよ」
その頃エドモンドは婚約破棄の書類が届くのを待っていた。
しかしアリーシャの抵抗は凄まじく届けたその場でのサインは勿論、日を跨いでも拒否の姿勢を崩さない。
伯爵家は事の次第を聞いてから派閥も追い出され一族の者はそのとばっちりを受け始めていると言う。
元々王族との縁続きになりたい政略的な婚約ばかりなのでアッサリ解消となっていたのだが。
アリーシャはエドモンドに会う事を諦めておらず、会ってしまえば有耶無耶にできるかの様に考えているのだろう。
しかし本性を知って恋していた気持ちが嘘の様に無くなった。
学園時代彼女のどこが良かったのか?と考えてリリアナを蔑ろにした過去を悔やんだ。
しかしアリーシャに一度会ってサヨナラを言った方がいいのかもしれないと思い始めていた。
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