一つの恋の⋯⋯残夢
学園に入学した最初のクラス分けで、王太子殿下と同じクラスになって私の望みがハッキリ形を創った。
それまでは私の好みで程々の爵位を継ぐ煩い係累の居ない人物を将来の伴侶として探すつもりだった。
跡継ぎを一人とその跡継ぎに何かあった時の予備の子を一人、そして可愛い女の子を一人。
三人産んだら私の遊びにも目を瞑ってくれる言いなりになる男性。
その為に親が決めた政略結婚を受け入れるつもりはなかった。
だから都合が良かったのだ、幼い頃に決められた体の弱い婚約者。
亡くなってからも隠れ蓑としてずっと操を立てるかの様に誤解させる。
お陰で親は心に傷が出来たとばかりにすぐ次の婚約者探しをする事もなく、自由を手に入れた。
相手の親もずっと息子を偲んでくれる健気な婚約者像に踊らされ、未だに何くれとなく贈り物や心配りをしてくれる。
彼等が望む理想の女性像を演じながら隠れて遊ぶ楽しさときたら、うふふっ。
口が堅く私に夢中の男達を手玉に取るのは実に愉快だ。
私が運命を感じたのはこうしたことが重なって王太子殿下であるエドモンドに出会えた事。
私に婚約者が居たらこの夢は潰えてしまったから。
それからは彼の目に留まる様にさり気なく視界に入る。
少し離れていてもそれを意識して行動した。
そして彼の従兄弟であり公爵家の長男であるハワードに目を付ける。
彼と仲良くなるともれなく王太子殿下が付いてくる。
私の企みは成功する、三人で心地良い空間を作ってやる。
彼等の欲している言葉をここぞという時に掛けてやる。
面白い程簡単に手の中に落ちて来た。
さぁ、あとはリリアナと言う婚約者の粗探しだわ。
なんだか真面目な優等生タイプだけど面白味も無ければ私の様な華やかさも無い。
アリーシャには将来の王太子妃となって彼の横に立つ自分しか見えていなかった。
ハワードは遊び人だ。
髪こそ薄茶だが瞳は海の色をしている。
全体的に男っぽいガタイでは無いが細くとも筋肉質で背も高い。
女性には都会的なこの容姿が好まれ特に不自由した事はない。
生まれも王室に繋がる公爵家の長男で少々刺激のない毎日に飽きが来ていた頃、婚約者以外の女性との遊びを覚えてしまった。
婚約者のメリッサに不満がある訳では無い。
妻にするなら彼女が良いのだろうとは思う。
しかし所詮は政略結婚だ、お互い割り切って夫婦関係を築けばいい、そんな風に思っていた。
そんな私が学園に入学して運命の女性に出逢ってしまった。
彼女の名前はアリーシャと言う美しく気高く柔らかい声の淑女だった。
彼女に話しかけられるだけで心が震えた。
何時も探した、彼女の姿を。
何時も傾けた、彼女の声に。
ハワードの今迄の人生が色褪せて見える程色鮮やかな世界が広がった。
宜しければブックマークと評価をお願いしますd( ̄  ̄)




