一つの恋の⋯⋯露呈
アリーシャは王妃様と気まずい沈黙の中お茶会の会場となる部屋へ入って行った。
「皆さんお揃いのようですわね、お待たせしました」
そう言って王妃は用意された中央の席へと歩みを進めた。
そしてその後ろを王妃よりも派手に着飾ったアリーシャが若干項垂れてトボトボと付いて来るのが出席者からは奇異に映った。
席に着席したアリーシャは改めて出席者の顔ぶれを見て驚いた。
てっきり王妃派の重要人物を紹介の為のお茶会と誤解していた。
高位貴族の夫人やその娘達だとばかり思っていたが、実際は王太子妃教育の講師陣とその助手が半数以上を占めそして残りは知らない顔ぶれだった。
「皆さん、今日は私のお茶会へようこそ。こちらに居りますのが王太子の婚約者、アリーシャ・ドクトール伯爵令嬢です、さぁ皆さんにご挨拶なさい」
「アリーシャ・ドクトールと申します。今後とも宜しくお願い致します」
「皆さん、今日は珍しいお茶とお菓子が手に入りましたの、どうぞ召し上がってね」
暫く自己紹介が続きひと段落したところで王妃が口火をきった。
「アリーシャさんところで王太子妃教育は順調ですの?」
「ハイ、勿論です。2年で終了の予定です王妃様」
「アラ、そんなに短期間で習得なさるの?優秀でいらっしゃるのね」
先程自己紹介された辺境伯夫人だった。
「アリーシャさんは学園時代から特に優秀だと噂で聞いておりましたわ」
「とんでもないことでございます、まだまだ若輩者ですから講師の皆様には暫くお手を煩わせてしまいますわ」
「では参考にご意見をお聞かせ願えないかしら?」
「⋯⋯それはどの様な」アリーシャは焦った。
すると反対方向から声が掛かる。
「それは良いですな、アリーシャ様は対隣国対策で興味深いレポートを提出なさっております。先日も満点に近い点数をお取りになったのです」講師が余計な口を挟む。
「まぁ、是非お聞かせください」
辺境伯夫人だけでなくみんなの目が向けられて次の言葉を待っている。
「いえ、私の意見など実践を間近に見ておられる夫人にお聞かせ出来る内容では有りませんわ」
内心焦りながら取り繕う。
「私も是非聞きたいわね、伴侶が不在の時は決断しなければいけない場面も戦時ではあり得ますもの」
王妃からも言われるが授業は上の空、レポートは他人に書かせているアリーシャにとってこの手の質問が一番の弱点だった。
エドモンドがいれば遮ってくれたり、さりげなく話題を変えたり出来るのだが今日はどれも使えない。
「いえいえ私の意見など参考にもなりませんわ、机上の空論ですから」
身振り手振りで辞退するアリーシャの派手なアクセサリーがシャラシャラ音を立てる。
「アリーシャさん、これはごく限られた者が集うお茶会の話です。何もそのまま伴侶に進言する様な心配は要らないのです。授業の成果を皆さんにここでお見せなさいと言う事なのです」
王妃が噛んで含める様に言う。
「⋯⋯それはその、あの、隣国にも色々ありますし」
「アリーシャ様、先日のレポートで宜しいのです。詳しくお聞かせください」
講師は薄々気がついているがそれを噯にも出さず追い討ちを掛ける。
「⋯⋯」答えられるはずもなかった。
気不味い沈黙の中、王妃が口を開く。
「まさかとは思いますが覚えて居ないのですか?レポート提出はいつの事ですの?」
「一昨日で御座います、王妃様」
「一昨日のことも覚えていないのですか?ではレポートの参考にした文献名は何ですか?」
「⋯⋯父の沢山の蔵書からなのでどれと言われましても」
「城の図書館は使っていないのですか?それにしても内容も参考資料も覚えていないとはどう言う事なのです」
「申し訳ありません、ここの所体調が優れず寝たり起きたりを繰り返しておりまして、その⋯⋯提出しないのも失礼かと思いその⋯⋯使用人に⋯⋯頼みました。勿論私の意見を言った上でです」
「その意見を言ってご覧なさい」
「少し熱も有り何を言ったかまでは⋯⋯でもちゃんと指示しました」
「レポートの代筆をですか!」
「しかし王妃様、確かにアリーシャ様の筆跡でしたが」
「どう言う事ですか?」
「それは、講師の方にご心配お掛けしない様に⋯⋯真似て書くようにと」
「もういいでしょう、では他の教科に関しては自分でやっているのですね?」
「⋯⋯」
「では他の教科について⋯⋯」
「すみません、まだ気分が優れなく⋯⋯」王妃の言葉を遮って言う。
王妃は大きな溜息を吐き、出席者を見回して言った。
「体調の優れない者が随分と着飾る事には熱心な様ですね」
「これは王妃様のお茶会ですので失礼のないようにと無理を押して⋯⋯あっ」
「無理を押して?体調が優れないのに先程は文官やメイドに大声で怒鳴っていましたね、上司を出せと」
「⋯⋯あれは誤解です、ミスを指摘したのがそう聞こえただけで」
「エドモンドに政務より自分を優先する様に言う事がですか?」
先程から目立たぬ様にそれでも興味津々で見ていた者達が胡乱げな眼差しでアリーシャを見る。
「とても不愉快です、王太子妃としての品格が備わっているとは思えません。王にも報告しなければならないでしょうね」
そう言うと王妃はアリーシャを残し席を立った。
これは前代未聞の出来事である、招待した客さえもそのままに席を立ったのだから。
アリーシャは顔色を無くしただ座っていた。
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