一つの恋の⋯⋯親心
ハワードが王都を離れて一か月近くが経っていた。
早くもこの生活に飽き王都恋しさ、残してきた情人恋しさで常にイライラしていた。
午前中はメリッサと結婚式の招待客、衣装、王都でのお披露目パーティー、領地でのガーデンパーティー等決め事が次から次へと押し寄せてくる。
手配や発注は執事や使用人がやってくれるもののこうも決め事が多いと教会で式挙げてサインでよくないかと思ってしまう。
学生時代から行事等は顔見せが終わったらサッサと抜け出していたので余程の事が無い限り最後までやり遂げた事も無い。
父親の公爵は根気の無い浮ついた息子の矯正の為、殿下の側近としての地位を確立する為を思えばこその事だったが本人は責任感とは無縁の性格だった。
午後からも領地視察で息つく暇も無い。
娯楽も大して無い田舎の農村にどれだけ見るものがあるのか、と言う程家令に連れ回される。
メリッサに適当に選んでよ、と言ったら泣きだして収拾が付かなくなるのは長年の付き合いで予想が付くので形だけでも同意してうんざりしていた。
そのメリッサは嬉々として高級品にこだわり、規模も費用も莫大な物になりそうだ。
話が脱線することも多く一つを決めるのに延々とどうでもいい話を絡めてくる。
こんな事してたらいつまで経っても王都には戻れないぞ。
王都での生活が懐かしい、早く帰って王城の女官達に会いたい、自由奔放な伯爵未亡人に会いたい、メイト商店の売り子がはにかむのを見たい、煌びやかなカジノに薫るタバコの香りパーティー会場の熱気⋯⋯。
足を組み替えはぁーと大きな溜息が出る。結婚式延期に出来ないかな?
ペン先が潰れるのも厭わず積み上げられた結婚関連の資料にインクシミを残すほど気を取られていた。
一方王城ではエドモンドがアリーシャとの婚約をどうにかして解消出来ないか頭を悩ませていた。
アリーシャの本性を知ってしまったからには一秒たりとも共に過ごしたくはないが宰相が関わっている関係上おいそれとはいかない現実があった。
リリアナの不名誉な噂を直ぐにでも打ち消してやりたいが、下手に動くと毒でも盛られ兼ねない。
幸いリリアナが目覚めた事は秘密にしてある。
アリーシャの前では今まで通りの理想の婚約者を演じつつ時期を待つのが辛かった。
そしてここにきて動き出した新たな人物が居た。
その人は今まで黙ってこの一連の騒動を静観して居た。
噂が城内を駆け巡ってもリリアナが婚約破棄されても。
後宮の頂点に立つ者として王より王太子妃に相応しい人物の教育を任されていた為、どんなに味方をしてやりたくともあくまでも中立の立場を貫かなければならなかった。
それだけ影響力が有り鶴の一声になり得る。
そして我が子である王太子の判断をそれだけ信じて居たし、それしきの事あしらえなければ王妃という重責を担う事は出来無いとの考えからだ。
王妃自身も結婚まで色々な横槍が入った。
王妃は見事にそれら妨害を跳ね除け王妃になるべくしてなった人物だった。
その王妃が前々からリリアナには性格的に優し過ぎる面があり、どちらかと言えばエドモンドと恋仲のアリーシャの方が向いているのかも知れない、と密かに思っていた、これ迄は。
しかしエドモンドから一連の報告を王と聞き、宰相及びドクトール伯爵家を擁する一派が台頭を画策しているとすれば国が荒れる。そこで遂に重い腰を上げた。
調査はほぼ終了した。
皆さんこんばんは。
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