ここでの様々な作業と驚きの報告
「成る程なあ。話には聞いていたが、子竜達の元気さは文字通り桁違いのようだな」
陛下の前では、少し離れたところでレイルズ特製のラプトルジャラシが完全に崩壊していて、それをまだ名残惜しげに子竜達が引っ張ったり千切ったりしていた。
「あの子達の歯はとても鋭いですからね。おもちゃにした布や紐は、大抵最後にはああなります」
笑ったレイの言葉に、陛下も笑って頷いていた。
「母上やマティルダが、布を裂いたり紐を結んだりして、子猫達に同じようなおもちゃを作ってよく遊ばせているぞ」
ふわりと風で飛んできた布の切れ端を掴んだ陛下が、笑いながらそう言ってその布を細く折りたたみ、小さく振るふりをする。
「ああ、確かに子猫達なら絶対に大喜びして追いかけるでしょうね」
笑ったタキスがそう言い、散らばったおもちゃの残骸を集め始めた。レイも、それを見て子竜達のところへ駆け寄り、足元に散らばるおもちゃの残骸を拾い集めた。
「ウキュウ」
残念そうにレイの手元を見た二匹が揃って小さく鳴いてしょんぼりと俯く。
「実はもう一つあるんだよね〜〜どうしようかなあ」
笑ってベルトの小物入れから取り出したのは、先ほどよりも全体に少し小さいが、同じように布を裂いたものを紐で結んで作った新しいおもちゃだ。
それを見た途端、目を輝かせた二匹がその場でピョンピョンと飛び跳ね始めた。
「どうぞ。投げてやってください」
笑ったレイが、新しいおもちゃを陛下に手渡す。
一瞬驚いたように陛下を見たシャーリーとヘミングが、今度は陛下の前でピョンピョンと飛び跳ねて小さく鳴いた。
まるで、早く投げろと言わんばかりのその様子に陛下は満面の笑みになると一つ頷き、わざとゆっくりと振りかぶってから力一杯放り投げた。
「シルフ達、遊んでやってくれ!」
飛んでいったおもちゃをもの凄い速さで走って追いかけ始めた二匹の頭上では、呼びもしないのに集まってきていたシルフ達が陛下の大声に歓声を上げて手を叩きそのまますっ飛んでいった。
そして新しいおもちゃが崩壊するまで、子竜達とおもちゃの取り合いっこは続けられたのだった。
子竜達が満足するまで遊んだ後は、家畜達や騎竜に手分けしてブラシをかけてやる。
ここでは、アンフィーをはじめとしたロディナの人達も手伝ってくれて陛下に実際にお世話する様子を見ていただき、最後には目を輝かせた陛下の希望で、ラプトルにブラシをかけるのを手伝ってもらった。
しかもその際、驚いた事にブラシを手にした陛下の元に子竜達が駆け寄り、さあ自分にブラシをかけろとばかりに何度も飛び跳ねて自己主張をしたのだ。
もちろん陛下は喜んで子竜達にブラシをかけてやり、シャーリーとヘミングはご機嫌で喉を鳴らしていたのだった。
その後は、坂道の横にある広い畑に陛下を案内して、これも来てくれたロディナの人達が畑での作業を実際にして見せ、陛下は彼らが行う農作業の様子をレイやシヴァ将軍の説明を聞きつつ感心したように見ていたのだった。
最後には、陛下の希望で畑に入ってもらい実際に畑の土を触ってもらったりもした。
そしてまだ少し収穫には早いが、ノーム達がこれなら大丈夫だと教えてくれた早成りのニンジンの収穫を少しだが体験してもらった。
教えられた葉を掴んで言われた通りに引いたら出てきた土にまみれた小さなニンジンを見て、手が土で汚れるのも気にせず陛下は子供のように目を輝かせていたのだった。
「では、こちらのニンジンは、夕食の際に使わせていただきます」
「おお、では楽しみにしておくとしよう」
陛下が収穫したニンジンはシヴァ将軍が受け取って用意していたカゴに入れ、それはそれは丁寧に運ばれていった。
「そう言えば、南ロディナのグスタム伯爵から報告があったが、画期的な、新しいジャガイモの収穫用の道具が開発されたそうだ。レイルズにはぜひ見てもらいたいとの事だったが、意味が分かるか?」
その後にギードやシヴァ将軍から畑に植っている農作物の種類の説明を聞いていた陛下が、不意に思いついたように広い畑を見ながらそう言ってレイを振り返る。
その言葉に、驚いたレイが目を見開く。
「ああ! それって、あの道具ですね! 凄いや。本当に開発したんだ」
感心したようなレイの呟きに、陛下だけでなくルークとヴィゴも揃って首を傾げた。
タキス達やシヴァ将軍は、何も言わずにそんな彼らを見ている。
「ねえギード。ギードが開発した麦刈りのあの道具を参考にして、南ロディナで新しくジャガイモを収穫する道具が開発されたみたいだよ!」
目を輝かせたレイの言葉に、皆の目が驚きに見開かれる。
「ええ、あの道具が?」
驚くギードの言葉に満面の笑みのレイが頷き、竜騎士見習いとして紹介された後に行った巡行で南ロディナのグスタム伯爵領へ行った際に、その広い麦畑で、ギードが開発したトリケラトプスに取り付けて使う麦刈りの道具が使われていた事を早口で説明した、そしてその際に聞いた話で、同じようにトリケラトプスに取り付けて使えそうな新しい道具の開発をしていると聞いた話もした。
「な、成る程。確かにそれならばジャガイモの収穫にも使えそうだな。ほお、それは素晴らしい。あれに関しての扱いは、ブレンウッドのドワーフギルドに任せておる故、一度バルテン子爵に聞いてみよう。恐らくそちらにも報告が入っておるだろうからな」
嬉しそうなギードの言葉に、陛下が笑顔で頷く。
「それならば、後ほどグスタム伯爵から直接ギードに連絡をするよう伝えておこう。あの報告は、私にはよく分からぬ部分も多かったが、農作業の効率をあげるのは収穫量を増やす事にも繋がる。それくらいは私にも分かる。そして食料の増産はそのまま国力に比例するからな。では、落ち着いたらレイルズには南ロディナへ視察に行って貰えば良いな。実際に見て労ってやってくれ。試作はかなり苦労したと聞いたぞ」
「そうなんですね。では行くのを楽しみにしています」
満面の笑みになったレイの言葉に、この後の予定の調整を考えたルークとヴィゴは、顔を見合わせてこっそり苦笑いしていたのだった。




