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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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陛下の願い?

「はあ……この家で、こんなに緊張しながら食事をしたのは初めてです」

「確かにそうだな」

「違いない」

 ため息を吐いたタキスの小さな呟きに、全く同じ事を思っていたニコスとギードも困ったように笑いつつ小さくそう言って頷く。

 ようやく帰って寛げるはずの石の家で、陛下と同席して料理人の作った豪華な夕食を食べるという、ある意味緊張しかしない苦行の時間がようやく終わったところだ。

 今は、食後のお酒を執事達が用意してくれていて、席に座ったままそれを待っているところだ。

 内緒話のつもりな小さな声だが、当然その場にいる全員の耳に入っている。

 陛下は、そんな彼らを面白そうに横目で見ているだけで特に何も言わない。

「大丈夫だよ。ちゃんと出来ていたって」

「レイ、そう言う問題ではないんですよ」

 笑ったレイの言葉に、タキスが大真面目に返す。

「私は楽しかったぞ。だがまあ、気を使わせてしまったようだな」

 完全に面白がっている陛下の言葉に、無言で慌てるタキス達だった。



「ところで、ニコスにちょっとお願いがあるのだが、良いだろうか」

 用意されたお酒を飲んでいた陛下が、顔を上げニコスを見ながら口を開いた。

「私にお願いでございますか? はい、伺います」

 突然の陛下からの指名に、グラスを置いて慌てて居住まいを正すニコス。

「ああ、そう改まらずとも良い。先ほどルークから聞いたのだが、ニコスは陣取り盤のかなりの強者だそうだな。後ほど一手対戦願えぬだろうか。最近では、同じ相手とばかり打っているので、新しい相手は貴重なのだ」

 笑った陛下の言葉に、ニコスが納得したように頷く。

 陣取り盤は、打つ相手によって攻め方や守り方にかなり個性が出る。その為、同じ相手とばかり打つよりも数多くの相手と打つのが良いとされている。

「もちろん、私如きで良ければいつでもお相手させていただきます。どうかお手柔らかに願います」

 そう言って笑顔で一礼するニコスを見て、陛下が小さく吹き出す。

「なんでも、マイリーと互角の対戦をするのだとか、しかも互いに連勝出来ぬほどの。いやあ、まさかこんなところにマイリーと同格の打ち手が潜んでいたとは嬉しい限りだ。しかもシヴァはニコスが陣取り盤を打てる事を今まで知らなかったと言って拗ねておったぞ。彼も陣取り盤の腕は中々のものだから、たまには相手をしてやってくれ」

 驚くニコスを見て、シヴァ将軍がわざとらしいため息を吐く。

「ニコスとはそれなりに長い付き合いになっておりましたが、まさか陣取り盤の強者であったなんて初めて知りましたよ。出来ればもう少し早く知りたかったです」

「これは失礼いたしました。こちらこそ、シヴァ将軍が陣取り盤をお好きだったとは初めて知りました。ぜひ、対戦いただきたいものです」

 若干拗ねたようなシヴァ将軍の言葉にニコスが慌てたようにそう返し、それを見た陛下が大笑いして、その場は暖かな笑いに包まれたのだった。



「では、ニコスはそこに座れ」

「はい、では失礼いたします」

 結局、食後のお酒は早々に切り上げ、そのまま別室に移動して陣取り盤での対決をする事になった。

 その前に、こっそり抜け出したルークとレイが大急ぎで持ってきた土産の荷物を確認して、マイリーが持たせてくれた陣取り盤を急遽設置しておいたのだ。

 何故か全部で五台あった陣取り盤は、全て新しいものではあったが、間違いなくどれも相当な腕の作り手によるものだと一目でわかる逸品揃いだった。

 その中で陛下が選んだのは、飴茶色の盤面が美しい陣取り盤で、透明な水晶と漆黒の黒水晶から削り出された駒は、これもさながら芸術品のような美しさを放っている。

「これは素晴らしい」

 ニコスが思わずと言った風に小さくそう呟き、兵士の駒を二つ手に取り握って見せる。

「では左を……よし、先手を取ったぞ」

 透明な水晶の駒を見た陛下が嬉しそうにそう言い、ニコスは苦笑いして黒い駒が入った入れ物を手元に引き寄せた。

 手早く駒を並べていると、目を輝かせたレイが陛下に一礼してからニコスの右隣に座る。その隣にルークが座り、ニコスの左隣に一礼したシルカー伯爵が座った。

 そして、陛下の右隣には椅子を引っ張ってきたヴィゴが座り、反対の陛下の左隣にシヴァ将軍が座った。

「では、よろしく。言っておくが遠慮は無用だぞ。全力でお相手願う」

「かしこまりました。では、全身全霊を持ってお相手させていただきます」

 にっこりと笑った陛下の言葉に一瞬目を見開いたニコスだったが、すぐに笑顔でそう答えた。

 明らかに身分差がある今回のような対決の場合、基本的に身分の低い方は相手に配慮して攻める事が多い。

 つまり、身分の低い方は勝たないようにするのだ。これは、貴族社会のある意味暗黙の了解的な部分が大きい。

 だが、今のように身分の高い側から対等の対決を希望された場合はその限りではない。

 一つ深呼吸をして身を乗り出すニコスを見て、見学者達は揃って目を輝かせたのだった。



挿絵(By みてみん)

2026年4月10日、TOブックス様より発売となります「蒼竜と少年」第二巻の表紙です。


イラストレーター様は、第一巻に引き続きKaworu様が、今回も素敵な世界とキャラクター達を描いてくださいました!

あの、エイベルがついに登場です!

どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m

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