協賛するのは誰?
「ああ、よかった。これなら少しはゆっくりいただけますね」
案内された部屋の奥、壁際に置かれた大きなテーブルの上にぎっしりと並べられた豪華な料理を見たタキスが、嬉しそうに取り分け用のお皿を手にそう言って安堵のため息を吐く。
これは自分で好きな料理を取る形式なので、格式ばったマナーはほぼ気にしなくてもいい。
同じ事を思っていたニコスとギードも、タキスの言葉に苦笑いしつつ頷いている。
「じゃあせっかくだから、今からでも付きっきりで給仕してもらう形式に変えてもらおうか?」
「やめてください。私達の貴重な寛ぎの時間を邪魔しないでください!」
揶揄うようなレイの言葉に真顔になったタキスが即座に言い返し、聞いていたニコスとギードだけでなくルークとヴィゴも揃って吹き出した。
「確かに、こっちの方が俺達も寛げるな」
同じく空のお皿を手にしたヴィゴの笑った呟きに、レイも空のお皿を手に何度も頷いていたのだった。
「ここでの生活、楽しんでいただけましたか?」
料理を選んでいると、横に来たルークにさりげなくそう聞かれてタキスは小さく笑って肩をすくめた。
「そうですねえ。ここに来る時に着ていた服が窮屈になるくらいに贅沢三昧させていただきましたよ。それから、食べた食器の片付けすらしなくてもいい、自分の身の回りの事を全て他人に世話をされる生活という、ある意味貴重な体験もさせていただきましたね」
しみじみとしたその答えに、ルークが必死になって吹き出すのを堪えている。
「それでも人って、不思議な事に今いる環境になんだかんだ言ってもそれなりに順応するんですよね。今では、とりあえず同じ部屋に家族以外の赤の他人がいても、あまり気にならないくらいには慣れましたね。おかげさまで」
最後はため息を吐きながらのタキスの言葉に、とうとうルークが横を向いて吹き出す。
「まあ、そのお気持ちは良く分かりますが、ご自分のお立場を考えて諦めてください」
「辺境の森に住むただ農民である私に、一体何をさせるおつもりですか」
分厚い鶏肉の燻製を取り分けながら、タキスがあきれた様にそう言ってルークを見る。
「ただの農民、ですか。まあ、ご本人がそうだとおっしゃるのなら、きっとそうなんでしょう」
「ええ、そういう事にしておいてください。主に私の心の平安の為に」
ルークと顔を見合わせたタキスがそう言い、二人は揃って乾いた笑いをこぼしたのだった。
「はあ、美味しかった。えっと、じゃあもうこのあとは陛下がお越しになるのを待つだけだね。一休みしたら、また書斎へ戻る?」
山盛りの料理を平らげたレイが、食後のカナエ草のお茶を手にタキス達を振り返った。
「そうですね。出来ればもう少し本を読みたいので、これをいただいたら書斎へ戻りましょう」
紅茶を手にしたタキスの言葉に、ニコス達も笑って頷く。
「どんな本を送ろうかなあ。楽しみ」
笑ったレイの呟きに、ルークとヴィゴが揃って不思議そうな顔になる。
「ん? 本を送る?」
不思議そうなルークの言葉に顔を上げたレイは、目を輝かせて石の家に書斎を作る計画を話した。
「ああ、それは良いな。俺達も協賛させてくれよ。俺達のおすすめの本を贈らせてもらうよ」
「もちろん、俺も協賛するぞ」
笑ったルークの言葉に、ヴィゴも笑顔で大きく頷く。
「じゃあ、後で相談させてください」
「あの、お話は有り難いのですが……本当に、無理のない範囲でお願いします」
笑顔のレイの言葉に、慌てた様なタキスがそう言って顔の前で手を振る。
「知識と教養は、どれだけあっても邪魔になりませんからね。それにガンディが言っていましたよ。特に医学関係は技術も知識も日進月歩ですから、常にそれらに触れて新しくしておく事は必要だと」
「医学関係の本は、元々ガンディに相談するつもりだったよ。僕じゃあ、何を贈ったら良いのか分からないからね」
レイの言葉にルークも笑顔で頷く。
「そうだな。そっち方面はガンディに相談するのが良いと思うぞ。間違いなく大喜びで色々取り揃えてくれるだろうからな。でもって絶対ガンディも協賛してくれると思うぞ」
「あはは、もしかしたらあのガンディの家に積み上がっている本の一部が石のお家に移動するかもね。書斎にする部屋は、広めの部屋にしないといけないみたいだね。でも、石のお家には空き部屋は沢山あるから心配いらないね」
完全に面白がって笑う無邪気なレイの言葉に、だが間違いなくそうなる未来が見えたタキス達は揃って困ったように苦笑いしていたのだった。




