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第24話 豹変

【悲報】連続更新終了のお知らせ。

 ハーイ・ハンドは倞の首元へ手刀を振り下ろす瞬間、何かが風を切る音が聞こえ――


「――ッ!」


 ――ハーイ・ハンドの右前腕に刺さる。


「何がッ!?」


 ハーイ・ハンドは前腕に刺さった見えない何かを・・・・・・・抜き捨てる。


「誰だ!何処にいる!」


 ハーイ・ハンドは叫ぶ。その瞬間背後から声が聞こえる。


「――さっきまで倞の隣に居たのを忘れたのか?」


 底冷えしそうな声で声の主――リリスは言う。


「貴様の速さの種はもう割れた。」


 それに対し、ハーイ・ハンドは愉快そうに笑う。


「種が割れた?それがどうしたと言うのですか?貴女がこちらの動きに対応できなければ意味は無いんですよ?」


「既に手は打ってある。」


「そうですか。それでは――ッ!?」


 ハーイ・ハンドは動こうとした瞬間、足がもつれ倒れてしまう。ハーイ・ハンドは訳が分からないと言う顔をする。そんなハーイ・ハンドにリリスは手にした自分の得物である『太古の魔装具オーパード・ウェポン』をハーイ・ハンドのうなじに置く来ながら話す。


「この『太古の魔装具オーパード・ウェポン』は所有者の好きな形状、効果を付与する事が出来る。先程お前に投げた物は弓状にし、麻痺を与える毒を付与しておいた。――まぁ、私もこれを使ったのがさっきで初めてだから効果も持って後30秒あるかどうかだがな。」


 そう言いながらリリスは手にした『太古の魔装具オーパード・ウェポン』の形状を変える。大きく、そして重く――そう考えながら出来上がった物は、剣と言うには大きすぎ、そして余りに重すぎる物だった。


「ふむ、やはりまだ使いこなせていないな。――まぁ首を切る事は出来るから良しとしよう。」


 リリスはそう言うと何とか逃げようとするハーイ・ハンドを足で押さえつける。


「では、さよならだ。」


 そして、リリスは振り下ろし――


 *


「――さよならはこっちのセリフですよ。」


 *


「――ゴフッ……。」


 ――どういう事だ?確かに毒は効いていた筈……。なのにどうして……。


 リリスは次第に熱を帯びてくる自分の腹を見つめる。そこからは背後から手刀が貫通していた。


「別に、初めは毒が回っていたのですが物の数瞬で解毒しただけですが。あぁ、私、これでも席持ちの中でも毒に対する抵抗低い方なんですよ。」


 ハーイ・ハンドはまるでリリスの心を読んでいるかのように話し始める。


「……じゃ……じゃあ何で、あ、あのま、ま倒れ……ていたん、だ?」


 リリスの疑問にハーイ・ハンドは愉快そうに笑いながら、


「不意打ちとは言え私に攻撃を当てた者がする事に興味があったからですよ。」


「興味……だと?」


「えぇ、壁の中では圧倒的に強い者か、圧倒的に弱い者かの二択しかありません。しかし、貴女はその中間だ。その様な者がその次にどの様な行動をとるのか、非常に興味深かったですよ。」


 それに、とハーイ・ハンドは続ける。


「一応、彼も惜しい所まで行ったのですが、どうやら心が折れてしまったようで……。実に嘆かわしい事ですね。」


 そう言うハーイ・ハンドを見てリリスは、狂ってる、と感じた。そして、倞はまだ死んでいないと言う確証が得られた事にホッとする。

 しかし、次の瞬間、


「では、まずは貴女が見ている目の前で彼の首を撥ねるとしましょうか。」


「や、やめろ……っ!そ、それだけは――」


「死に損ないが何を言っているのですか?」


 ハーイ・ハンドはリリスに突き刺していた手刀を強引に抜く。瞬間、大量の血が流れ出す。リリスは膝から崩れ落ちる。しかし、手は倞に向けられていた。


「――、――――。」


 呼吸が上手く出来ない。血が流れ過ぎた所為で視界がどんどん霞んでいく。それでも懸命に倞の元へ行こうとする。だが、それもすぐに終わる。だらりと力無く手が落ちる。それと同時にリリスは意識を失った。


 *


「もう意識を失いましたか。体の基本構造はそれ程変わらないと言うのに、情けない。」


 ハーイ・ハンドは視線を意識を失ったリリスから未だに座り込んでいる倞へと向ける。


「――一瞬でも私を激号させた事は称賛に値します。ですから安らかにお眠りくださいね。」


 ニタリと笑みを浮かべハーイ・ハンドは手刀を振り下ろし――。


 *


「――はっ?」


 ――ハーイ・ハンドの右手首から先が無くなる。

 ハーイ・ハンドは一体何が起こっているのか理解できないでいた。否、理解をしたくなかった。自分より速く動いて手首を切断したなんて。


「――いやァ、まだ死なれたら困るンでなァ。」


 そんな彼に、手首を切った男は話しかける。だが、ハーイ・ハンドの耳には届く事は無かった。


「あれェ?こンな事で壊れるのかよォ。散々こっちの事甚振ってくれてたのによォ!!」


 男――倞はユラリと立ち上がる。口元はニタリと歪み、目は虹彩の部分が真っ赤に染まり、愉悦に浸る様に歪む。長い髪が左目を隠し倞の姿を更に歪に、そして狂気的にさせている。

 ハーイ・ハンドはそんな倞を見て、一瞬誰だか分からないでいた。そして次の瞬間、つい先ほど心を折った奴と認識する。そして、


「――何てことしてくれたんだよォォォッ!!」


 有りっ丈の声で怒鳴り散らす。それは怒りをぶつけている様にも、恐怖に溺れ無い様にしているようにも見える。

 倞はそんなハーイ・ハンドの姿を見て更に笑みを深める。その姿にハーイ・ハンドは、自身が出せる最高速度で倞の背後を取り、残った左手で手刀を作る。だが、


「そンなに遅いンじゃァ、俺は殺せ無いぜェ?」


「んなッ!?」


 倞はまるでハーイ・ハンドが|そこに来るのを予知している(・・・・・・・・・・・・・)かの様に先回りする。更に、


「ほれ、これでも喰らいなァ!!」


 何気無く放たれた蹴りがハーイ・ハンドの無防備な腹に吸い込まれる。直後、普通じゃ有りえない程の衝撃がハーイ・ハンドの体を掛けぬ駆る。


「ガハッ!」


 そして、膝から崩れ落ちる様に倒れる。倞はそんなハーイ・ハンドの無防備となった腹を思いっきり蹴る。すると、まるでボールの様に吹き飛ぶ。そのまま壁を数個貫通したところでようやく止まるが、口からは夥しい量の血が流れ、右腕は本来曲がってはいけない方に曲がり、頭から止めど無く血が流れる。何とか無事な左手で起き上がろうとするが、また力無く倒れる。

 そんなハーイ・ハンドの頭上に倞がニタリと笑いながら歩いて来る。


「どうしたァ?まさか、こンなのでくたばる様な奴じゃねェ―よなァ?うン?」


「ぐッ……グォォォ……。」


 必死に立ち上がろうとするが崩れるを繰り返す。暫く楽しそうに見ていた倞だが、もう飽きたとばかりに得物であるショートソードをハーイ・ハンドの項に当てる。そして、


「あばよォ。」


 振り下ろされたその剣は寸分違わずハーイ・ハンドの首を通り切断する。数多の犠牲者を出した災厄は同じ様な目に合い呆気無くこの世から退場した。


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