第18話 魔族襲来
「クソッ!」
ボルジアは倞との邂逅の後、苛立ちを隠せず周りに当たり散らした結果、祭りの為に何時もより増員された憲兵によってピョングから追放されていた。
「クソッ!クソッ!クソッ!!」
ボルジアはそこら辺に転がっている石を手当たり次第に蹴り飛ばす。それでも尚、苛立ちは収まらない。
「あの糞ガキが……たかがAランクだからって好い気になりやがって!!」
自分の事を棚上げにして、ボルジアは『世界の果て』の麓にあるスチョンと言う町へと向かう。
『世界の果て』――それは倞が初めに見た巨大な壁の正体だ。遥か昔から存在し、壁の向こうには混沌が広がっていると言い伝えられており、過去に数度だが頭のネジが飛んでいる連中が壁を壊そうとあらゆる魔法を壁にぶつけたが無傷のままだったと言われている。今では一部で神聖視され宗教まで出来上がる始末だ。
日が沈み、夜になってもボルジアは周りの様子に気づく事無く歩いて行く。幸いこの辺りに凶暴な魔獣は粗方狩られており、ボルジアの身に危害を加える様なモノは存在しなかった。
「チクショウ……この俺様を何だと思っ――何だこの音は?」
岩をツルハシ等で叩くような音が微かに聞こえた。だが、違和感はそこには無い。
「何だこの魔力は……。こんな魔力を放つ物体が有るか?」
普通では感じる事の出来ない魔力が才能の無いボルジアですらヒシヒシと伝わる程の強さで放たれていた。それも『世界の果て』の方からだ。
「まさか、魔族なんて事は無いよな……?」
魔族――昔、この世界の覇権を争い戦ったとされている種族だ。彼らは好戦的で自らの王でさえ最も強い者がなると言う。
彼らが出てくる話は沢山あり、その中でもっとも有名な物が今から約2000年程前の出来事を物語にした物である。
――初めの内は魔族内での争いだったが、ある時、圧倒的な強さを誇る王が誕生した。その王は暫くの間他の物と争っていたが、満たされる事は無かった。そして、遂にその王は人類に手を出す。その頃人類は小国が周りと併合、分裂を繰り返していた時代であり、魔族の急な侵攻に成す術も無く敗走を重ねていった。そんな時、当時最大最強の国ムサシが異世界より勇者を召喚する事を決める。ムサシは数年の月日をかけ失敗を重ねながらも魔方陣を完成させ、遂に勇者を召喚する事に成功する。この時、既に大陸の殆どは魔族の攻撃を受けていた。各国はムサシの勇者召喚成功の報により勢いを取り戻す。
しかし、魔族との戦力差はかなり開いた状態でいた。幾ら勇者であろうと、この戦力差の前には成す術も無かった。そんな時、普段滅多に他の種とかかわる事の無いエルフが加勢する。エルフの膨大な魔力による魔法の攻勢により少しずつだが戦況は良くなってきた。その後、勇者はエルフ等から精鋭を集い、少数精鋭で魔王の元へ奇襲を掛けに行く。途中で仲間を失いながらも何とか魔王の元へ辿り着く。そして魔族最強と人類の希望。最後の戦いが始まる。
そして、結果は人類の勝利だった。残された魔族は元居た場所に戻され、勇者はその力の全てを使い巨大な壁を築いた。こうして世界の平和は取り戻された――。
と言う物である。当然今ではそんな事は有りえないという考えが基本である。ボルジアも無論有りえないとずっと考えていた。子供の頃はそう言う勇者など強者に憧れなろうとするが大人になるにつれ現実を思い知る。しかし、今この状況は正にお伽噺に出てきた現象と似ていた。
――こりゃ、やべぇぞ……。
ボルジアは先程まで苛立っていた事を忘れ、戻ろうとするが、ふと立ち止まる。
「――もし、何ともなかったら……、見るだけ見てから決めるか。」
ボルジアは『世界の果て』へ歩みを向ける。もし此処で戻っていればまた違った未来になったであろう。ボルジアは後にこの時の選択を後悔する事になる。
*
「――ここが一番強いな。」
『世界の果て』から発せられる魔力を辿り着いた場所は、目の前には何もない平野が広がっている所だった。
「――これ絶対中に何かいるだろ……。」
壁の向こうからツルハシの音が聞こえる。ボルジアの脳内で警報が鳴る。ボルジアは警報に従って駆け足で離れる。少しの間走った後急激に魔力が収束するのが感じられた。
「――おいおい……、そりゃねーぜ……。」
瞬間、轟音と共にの一部が吹き飛ぶ。破片はボルジアが居る場所を優に超え、拡散していく。幸い近くに民家が無かった事で被害は無かったもののボルジアは安心していられなかった。
壁の向こうは土煙が舞い見えないが、何かがこちらに向かっているのは分かった。
「早く知らせ――」
「――知らせてどうするのかね?」
「――へ?」
ドス、と言う音が胸から聞こえ熱を持ったように熱くなる。ボルジアは自分の胸を見て、
「な……何だ…………これ、は……。」
「ふむ、やはり下等生物は痛覚すら無いのでしょうか?」
ボルジアの背後に立つ男は馬鹿にするように言う。ボルジアは何とか後ろを振り向く。
「おっと、下等生物に見られるなど一族の恥。本来ならこの手を血で濡らす事すら汚らわしいのに。」
手刀を一閃。ボルジアが最後に目にしたのは顔立ちが整った男による手刀だった。
*
男は血を払うと大きな声で宣言するように言い放つ。
「遂に我ら魔族は千年の時を経て再びこの地を蹂躙するであろう!!」
男の笑い声が辺りに木霊する。この瞬間、遥か昔に起こった戦争が再び勃発した。
ボルジア…これでもかなりの腕の持ち主。魔法が使えない代わりに身体能力だけで此処まで来た。名前は書いてる最中にふと思い浮かんだ。
ちょっとした小話
・王国の『予言の書』はプロットの段階では『裏死海文書』だった。流石にまずいと思い『予言の書』に変更。実際あまり変わらないとかは言ったらダメ。
・ソウルの元の名はガッツ。これはソウルを根性と言う意味にしようと考え、根性なら大剣だろ。それに根性が有る=ガッツが有る、よしガッツにしよう←
ソウルは「精神」と言う意味。何となく似てるよね。




