第19話 戦闘準備
――『世界の果て』の一部が破壊された――
その事件は瞬く間に各国へと流れた。当然祭りが行われているピョングにもその事が知らされる。
中から魔物が出てくると錯乱し逃げようとする者、好奇心旺盛で穴を見に行こうとする者、混乱に乗じて盗みを働く者等で混乱していた。
アニメジア連邦は早急に事態の収束を図るため、精鋭を『世界の果て』の崩壊部へと向かわせる。
初めは上手く行くであろう、そう思っていたが数時間後、部隊は全滅したとの知らせが入った。
「バカな!」
「あの部隊は我が国の精鋭が集っておるのだぞ!!」
「報告します!『世界の果て』崩壊部より謎の軍隊が出現!現在ピョングへと向かってきます!」
「なに!?」
「ええい!冒険者でも良いから足止めをさせろ!報酬は後でたんまり払うと言って置け!」
*
「何故我らが王はこのまま進軍をさせてくれないのでしょうか。」
ボルジアを殺した男は少し苛立ち気に部下に問う。
「ハーイ・ハンド様、恐らくですが我らが王はある程度戦力を集めさせてから一気に叩く御積もりなのでしょう。」
「全く……ようやく外へ出る事が出来たと言うのに……。――あぁ、今すぐ蹂躙してやりたい。」
ハーイ・ハンドがそう言った時、伝令が走ってくる。
「我らが王からの命令です!各自行動を開始せよ!繰り返します。各自行動を開始せよ!」
伝令の報告にハーイ・ハンドは玩具を与えられた子供のような笑顔になる。
「皆の者!聞いたか!これより下等生物の駆逐を開始する!」
魔族が人類を殲滅せんと進軍する。
*
「壁がどうしたって?」
「だ・か・ら!破壊されたんだってよ!しかも噂じゃ魔族が壁から出てきたって話だぜ?」
ピョングの冒険者ギルド内で倞は酒を飲んでいた男から話を聞かされていた。
「なぁ、おっちゃん。魔族はお伽噺に出てくるような奴だろ?そんな奴が壁から出てくるってどうよ。」
「くわぁー!分かってねーな!」
いや、分かりたくも無いわと倞は心の中で思うが表情には出さないようにする。
そうしている内にも男からあーだ、こーだと色々聞かされ少々ウンザリして来ていた。これがボルジアの様に悪意が有って絡んで来たなら対処しやすいのに……、と少々物騒な事を考え始めていた時、依頼のボードに一枚の紙が貼られた。
『壁から進軍してくる敵を足止めせよ
報酬は成功が確認され次第、順次払う。
期間は敵軍が撤退、若しくは民間人の避難が完了するまで』
「な?言っただろ?」
男は倞にドヤとした顔を向けてくる。
「――確かにこりゃヤバそうだな。おっちゃんはどうするんだ?」
そんな男を倞はあえて無視しこれからどうするのかを問う。
「何言ってんだよ、俺は晩年Cランクだぞ?行っても足を引っ張るだけだ。やるなら民間人の避難の手伝いだな。」
「ふーん、まぁ頑張れよ。俺は受けに行くから。」
そう言って倞は男と別れる。男は、頑張れよー、と一言声をかけると再び酒を飲み始めた。
*
「と言う事で俺はこの依頼を受けに行く事にしたんだが、お前はどうする?」
倞は一旦宿に戻り、リリスに事の説明をする。リリスは少し考えた後、
「――私は行くぞ。もしかしたらあの時見た未来が起こるかも知れないからな。」
「そうか。そりゃ心強い。」
倞はリリスにニコリと笑いかける。
「それじゃ、依頼を受けに行くか。」
「あぁ、そうだな。それに長期戦になる。それなりの装備も整えておかないとな。――私が色々買い揃えておくからお前は依頼を受注し出来るだけ正確な情報を集めておいてくれ。」
「了解した。」




