第13話 とある日常
この章になってから何故か筆が進む。
冒険者ギルドエード支部。此処で、倞とリリスは今回の依頼の清算を行っていた。
「此方が今回の報酬となります。」
ジャラ、と貨幣が入った袋が倞の前に置かれる。倞はそれを取り、
「おう、何時もありがとな。」
「い、いえ、受付嬢としての仕事ですし。」
「そうか。ま、頑張れよ。」
そう言うとニコッと笑う。リリスはそんな倞を半目で見ながら溜息を一つ吐く。
「――早く行くぞ。」
「おう。」
*
「ふぅ。やっぱりお湯に浸かるって良いなぁ。」
倞は湯船の中で足を伸ばしながら寛ぐ。頭を淵に乗せだらりとしていると体中の疲れが抜ける様で気持ち良い。倞はそんな気持ち良い気怠さに身を委ねながら目を閉じる。
どの位経っただろうか。ピチャ、ピチャ、と此方に向かってくる足音を聞きうっすら目を開ける。するとそこには、引き締まった筋肉が存在感を表していた。
「ソウルか。」
「久しぶりだな倞。」
そうだなー、と答えながら倞は最後にソウルと出会った時を思い出す。
「確か最後は、二ヶ月前だっけ?」
「あぁ、帝国の方での仕事が入ったからな。――しかしお前は見ない内にまた成長したな。」
「そりゃ、成長期ですから。」
「それにしても異常なんだがな。」
ガハハハハッ!と笑うが、他にも人が居るのを思い出し小さな声で、すまん、と言う。
倞は何時もと違うガッツに、
「何かあったのか?」
と聞く。
ガッツは話そうかどうしようか迷っているようだった。その姿に倞は、
「無粋な事を聞いたな。すまん。許せ。」
「いや、良いんだ。――ただ、自分の中でまだ踏ん切りがつかないだけでな。」
「――ま、相談事なら何時でも言ってくれや。出来る限り相手になるから。」
「かたじけない。」
と言った所でソウルは、
「ダメだ。如何してもこの銭湯とやらには慣れん。やっぱり男は黙って川の水だな。」
「そう考えてるのはお前だけだアホ。」
それもそうかもな、とソウルは笑いながら去って行く。
そんな後姿を見て倞は、
「――もう少し入っていようかね。」
*
その後、倞が出てきたのは30分後の事だった。既にリリスは帰ったのか周りに知り合いはいなかった。
倞はその事を確認すると、市場の方へ足を向ける。
少し歩くと倞の鼻に何かを焼く香ばしい匂いが漂ってきた。が、倞はその匂いを嗅ぐと、
「肉片……、盗賊……、ホモ……、うぅ、寒気が。」
どうやら若干トラウマになってしまったらしい。
そのまま歩いていると目の前に服屋が見えてきた。倞はそこに足を向ける。そして初めに目に見えたのはこの世界では珍しい黒いロングコートだった。倞は今着ている一般的な服を見た後、目の前のロングコートを見る。そしてロングコートの値札を見て、自分の財布を見る。
「――足らん……だと。」
*
その頃リリスは宿から近い武器屋に来ていた。近頃自分の武器であるロングソードを酷使し過ぎていた為、簡易的なメンテナンスでは修復不可能な程ガタが来ていた。その為よく通う武器屋でメンテナンスを、あわよくばもう少し性能の良い武器を買おうをリリスは思っていた。因みに倞は基本的に魔法での戦闘に特化しており、彼の得物であるショートソードも、リリスから、
「懐に入られたらどうする心算だ?」
と叱られたために渋々買った物である。なので基本的なメンテナンス以外今の所必要は無いのである。
そんな事はさて置き、リリスは武器屋に着き中を物色していた。目ぼしい武器が無い中、ふと、目に留まった物があった。それは『硬化』の魔法陣が刻まれた物ロングソードであった。『硬化』の効果は刃こぼれし難くなり剣自体の耐久性能も上がると言う物で、リリスはその剣の値段を見てから自分の財布の中身を見て、
「――全く足らん……。」
*
倞が宿に着くと同時にリリスも宿に戻ってきた。何故か何時もより暗い感じでノソノソ歩いて来る。対する倞も肩を落としフラフラしながら歩いている。宿の前で二人が顔を合わせる。
「――もう一稼ぎするぞ。」
「おう。」
二人の気持ちは見事一致したようだ。
この後、倞とリリスは破竹の勢いで依頼をこなして行き、見事買いたい物を買えてご満悦の様子で宿に戻ったのが確認された。
『硬化』 「土」「付与」「密度増し」




