第9話 長毛猫と運子さん(仮名)問題
長毛種の猫にはカット問題がある。
(1)サマーカットしないと夏バテする。
(2)毛玉ができる。
(3)肉球の間の長い毛を切らないと室内で滑る。
(4)尻毛をカットしないと、運子さん(仮名)がく
っついてぶら下がる。
この三点である。
私はこの時あまりにも無知だった。
(4)の状態になって初めて事の重大さに気づいたのである。
運子さん(仮名)をハサミで切り落とし、Cコードを浴室で洗う。
Cコードは臆病な性格。
そして風呂が大嫌いだ。
シャワーの水に驚き、まだ運子さん(仮名)の取りきれていないビショビショの体で私の顔面を駆け登ってきた。
鋭い爪で掻きむしりながら私の頭の上に止まり、ニャアニャア鳴いているCコード。
私の方が泣きたい。
だが、今回はいい勉強になった。
Cコードをよく洗い、初めて自分でサマーカットしてみた。
切り終わったときは上出来だと思ったが、冷静に見るとざっくりした断面が正十二面体のような仕上がり。いや、ポリゴンと言うべきか?
美猫の要素は、刈られた毛と共にどこかに行ってしまった。
家族があまりの惨劇に無計画な私を責め立て、哀れみの目を向けられて自信を失ったCコードは隅っこに隠れてしまった。
が、数日すると賢いCコードはすぐに快適さに気づいて元気に遊ぶようになった。
だが、Cコードは執念深い。
Cコードが捕ってきた大きなネズミをEマイナーが奪い取ったあと、彼女は虎視眈々と復讐の機会を狙っていた。
父がEマイナーの両手を握り、
名作映画"Shall We Dance?"
の真似をして廊下で踊り出したとき。
Cコードは両手の自由を奪われたEマイナーの尻を執拗に引っ掻き続けた。
「ギャアアアアア!!!」
父はEマイナーの両手を握ったまま廊下を走った。
追い続けるCコード。叫ぶEマイナー。
いや、放そうよ父。
その前になぜ踊ってた、猫と?
Eマイナーの背面のハゲに残る爪痕。
思い出すだけで恐ろしい復讐の一幕。
彼女が鏡で自分を認識する生き物でなくて本当によかった。
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