第12話 幽霊騒動
チンチラは猫の中でもおとなしくて声が小さいと本には紹介されている。
Cコードは第一言語がサイレントニャーで、ほとんど声をあげて主張することがなかった。
言語の代わりなのか、彼女はリラックスすると常にヨダレが出る猫であった。
妹はCコードの症状を案じ、病院に連れていった。
「個性ですね。稀にそういう子もいます」
Eマイナーの件で私は医療不信、疑心暗鬼になっている。
Cコードの口の両端からは、粘液質のヨダレが時々つららのように垂れ下がっている。
服がビショビショになるほどの放水量だ。
正常な猫には見えない。
だが、膝の上でつねに大量のヨダレとゴロゴロプウプウ喉から変な音を出しながらも、Cコードは長寿で大往生を遂げた。
個性だった。
獣医師が正しいことが証明された。
Cコードは命が抜け出ていっても可愛い顔でこちらを見据えたまま、ずっとヨダレを垂らしていた。
春先の冷たい土に彼女を埋めた。
Sが失踪し、Eマイナーがあとを追うように病死した。
誰もいなくなってしまった。
まったく眠れない。
これがペットロスか。
こんなに悲しいのに治療法が無いなんて、恐ろしい病気だ。
眠れずにテレビを見ていて違和感に気づく。
「……ニャアアアア……ン」
テレビ台の下から、猫の声がする。
もう誰もいないのに、Cコードの小さな声が台の中から。
「Cコードちゃんの幽霊が帰ってきたのかも!」
妹は泣いて喜んだが、私は不安が増した。
透明になっても、帰ってきてくれたのなら私は歓迎する。
だが、なにか訴えたいことがあって成仏できないのなら話は別である。
残念ながら私は幽霊に詳しくはない。
詳しそうな先輩を探して相談し、お供え物をすることにした。
中にクリームが詰まった高級カリカリ。
奮発したぞ。たくさんお食べ。
数日後、私は唐突に気づいてしまった。
……猫の鳴き声ではない。
テレビの録画用HDDの起動音だ!
予約録画の時間になると起動して、Cコードに似たニャアアアアン音を発していた。
なるほど。なるほどね。
私は泣きながら録画用HDDに高級カリカリを供えていたわけだ。
死ぬほど恥ずかしい!
だがCコードが成仏したのならそれでいい。
色々あったが幽霊騒動は終着した。
年年歳歳猫相似たり
歳々年々猫同じからず
毎年毎年、猫動画で似た猫を探している
どれも似て見えるけど、何年経とうと
私にとっての猫はあの子たちだけなのだ
猫編 完
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