第89話:Bランク試験への誓い
リディアのエイミーの自宅、その地下室。薄暗い魔石の灯りの中、二人は向き合っていました。
「いいか、エイミー、俺は今日から三日間、お前の体で新宿のBランク昇格試験を受けてくる」
「分かりました。気をつけてくださいね。私はこちらで、ルナリス商会のガザルさんのところへいつもの商品納入に行き……その足で魔境へ向かい、貴方の体の修行をしておきます」
エイミーはそう言って、大介の逞しい胸板を指先でトントンと叩きました。
大介はエイミーの重厚な魔導杖を手に取り、その感触を確かめます。
「ああ、ガザルさんによろしくな。俺の方はお前の魔力なら、何が来ても力ずくでねじ伏せてやるよ」
「力ずく……。いえ、期待しています。……では、始めましょう」
エイミー呪文を唱えると、光を放ち、意識が混濁します。
数秒後、目を覚ました大介(エイミー体)は、ふわりと広がるローブの裾を払い、鏡の中の可憐な姿に不敵な笑みを浮かべました。
「さて……行くか。最高の報告を待ってろよ、エイミー」
一方、大介の体となったエイミーも、拳を握り込み、その圧倒的な質量に深く頷いていました。
「……大介さん。私もこの『素晴らしい肉体』をさらに仕上げておきますね」
大介(エイミー体)は新宿ギルドへと向かう。
ローブを翻し、重厚な杖を携えて歩く姿は一見すれば気高き魔導師。
しかし、その足取りに宿る「格闘家の重心」は隠しようもなく、すれ違う冒険者たちは本能的な恐怖を感じて道を空けている。
「……おい、今日のドリル魔女、いつも以上に迫力があるな」
「ああ。歩くたびに魔力が渦巻いてやがる……」
ギルドのカウンターで、試験官の北川さやかが書類から目を上げ、引きつった笑みを浮かべました。
「エイミーさん、体調は万全のようですね。……今回の試験は、第十七層の変異種『レムナント・イリュージョン』の討伐。精神を削りに来る厄介な相手ですが、貴女なら……」
「ええ、問題ないわ。……さっさと終わらせて、戻ってくるわ」
大介は不敵に微笑み、エイミーの華奢な指先で重い杖を軽々と回すと、深い迷宮の闇へと足を踏み入れました。




