表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

80/101

第73話:魔境のBランク遠征編:中編

魔境のBランク遠征編:中編

【魔境の蹂躙と、芽生える疑惑】

 『静寂の森』をさらに奥へと進む一行。本来なら一歩進むごとに命を削るような緊張感が漂うエリアだが、今のパーティーにはどこかピクニックのような明るい空気が流れていた。理由は明白、ムードメーカーのリリーと、彼女の笑顔を守るために「無双」を続ける大介(中身:エイミー)の存在だ。

「すごーい! 大介くん、今の足払いでオーク・ジェネラルが宙を舞ったよ! 私、あんなに綺麗に飛ぶオーク初めて見た!」

「リリーさんが事前に『ライトニング・デイズ』で相手の視界を奪ってくださったからです。あのアシスト、本当に素敵でしたわ……じゃなくて、助かった!」

「あはは、照れなくていいのに! もー、大介くんってば筋肉ムキムキなのに中身は乙女なんだから!」

 リリーが大介の逞しい二の腕に抱きつくようにして笑う。エイミー(大介体)は、自分よりもずっと小さくて柔らかいリリーの体温を感じ、大介の顔を真っ赤にしてフリーズした。

「(なっ……なな、なんて大胆な! この健康的なお肌の感触、そして太陽のような香り……。大介さんのこの体、今すぐお貸ししている代金を百倍にしてお支払いしたいくらい、役得ですわ……!)」

【隠しきれない「お嬢様」の片鱗】

 だが、そんな微笑ましい光景の裏で、リーダーのガルガンは深刻な表情で大介の背中を見つめていた。

「(おかしい。アビス・スパイダーの時も凄かったが、今日のあいつは動きのキレがさらに増している。……だが、それ以上に……)」

 休憩時間、大介(中身:エイミー)の行動がガルガンの不信感を煽る。

 大介は、無造作に地面に座るのではなく、わざわざハンカチを取り出して切り株を拭いてから腰を下ろした。さらに、持参した水筒の水を飲む際、なぜか小指がピンと立っている。

「……おい、大介。お前、さっきから食ってる干し肉の食べ方、上品すぎねえか? ナイフで一口サイズに切り分ける格闘家なんて初めて見たぞ」

「あ……。い、いえ、これはその、咀嚼を助けて筋肉への吸収効率を高めるという……『組織』の最新のメソッドでして!」

「そ、組織? ああ、あの噂の……。まあいいが、さっきリリーに花を摘んで渡してたのも、そのメソッドか?」

「それは……! リリーさんの髪に、あの青い花が絶対にお似合いだと思ったので!」

 リリーは髪に挿した花を指で触り、「えへへ、可愛いよねこれ。ありがと!」とウィンクを送る。その破壊力に、エイミー(大介体)は鼻血を出しそうになりながら悶絶した。

【Bランクの真実】

 不穏な空気は、エリアの主である**『キマイラ・エルダー』**が姿を現したことで一変した。

 三つの首を持ち、それぞれの口から火炎、毒霧、そして超音波を放つBランク最上位の怪物だ。

「総員、散開! リリー、最大火力を溜めろ! 大介、お前は――」

「俺が、リリーさんへの道を切り拓きます!」

 大介(中身:エイミー)が吼えた。

 大介から教わった「先手必勝」に加え、エイミー自身の魔力感知能力が組み合わさる。キマイラが炎を吐く予兆……魔力が喉元に集まる瞬間を完璧に見切り、その「中心」を射抜くように踏み込んだ。

 ――ズドォォォォン!!

 大介の拳がキマイラの火炎首を真下からカチ上げた。不発に終わった炎が怪物の口内で爆発する。

「リリーさん、今ですわ!」

「おっけー! 燃え尽きちゃえ! 『グランド・プロミネンス』!」

 リリーの放った極大魔法が、姿勢を崩したキマイラを直撃する。凄まじい爆炎。

 勝利を確信したガルガンだったが、煙の中からキマイラの毒尾が、詠唱直後で動けないリリーへと音もなく伸びた。

「危ない!!」

 大介(中身:エイミー)は、考えるよりも先に体が動いた。

 リリーを突き飛ばし、自らが盾となる。毒針が大介の逞しい肩を深く貫いた。

「大介くん!?」

「……っ。リリーさん……ご無事……です、か……?」

 膝をつく大介。毒に冒されながらも、彼は(彼女は)リリーの安全を確認して安堵の笑みを浮かべた。その微笑みは、どこからどう見ても、愛する人を守り抜いた「騎士(お嬢様)」の気高さに満ちていた。

「お前……! 大介、しっかりしろ!」

 駆け寄るガルガンの目には、毒に苦しむ男の顔ではなく、なぜか気高い少女の幻影が重なって見えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ