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第192話:決死の修理ミッション


 「迷っている暇はねえ! 佐藤、全社員を避難させろ! 現場の指揮はセレナ、お前に任せる!」


 大介の声が、魔力の嵐の中で響き渡った。


 双葉荘の地下、異世界と地球の境界線が歪み、空間が剥き出しの神経のように脈打っている。


大介は、この日のために秘密裏に改良を進めていたパワードスーツ「剛力甲・不動 ふどう・かい」の装着を完了させた。


 それは、地球のIT技術による姿勢制御と、リディアの魔導金属が融合した、文字通り「リディアトレードの結晶」とも言える重装甲だ。


「ダイスケ、本気なの!? 中心部のエネルギー密度は、生身の人間が耐えられる数値を超えているわ!」


 リリーが警告するが、大介はバイザーを閉じ、不敵に笑った。


「俺が始めた後始末だ。それに、このスーツの減衰機能なら、数分は保つ。……ガルガン! お前の腕力で、歪んだ空間の『蓋』をこじ開けろ! リリー、その隙間に精密魔力制御を叩き込んで、回路を繋ぎ直せ!」


「がっはっは! 合点承知だ。このドワーフの怪力、神様に見せつけてやるぜ!」


 ガルガンが大斧を叩きつけ、次元の亀裂を力任せに押し広げる。


その一瞬の隙を突き、リリーが何万もの魔法の術式を、地球側のITチームが遠隔操作するスーパーコンピュータの並列処理に乗せて、ポータルの核へと送り込んでいく。


「全システム、オールグリーン……とはいかねえが、やるしかねえ。行くぞ!」


 大介はブースターを吹かし、崩落する時空の深淵へと飛び込んだ。


 スーツの警告音が鳴り響き、外部装甲が魔力の奔流に削られて火花を散らす。


「エイミー、聞こえるか! お前が作ってくれたこの会社、俺が絶対に壊させねえ!」


 大介は、ポータルの核である「特異点」を視界に捉えた。


 そこには、地球の光ケーブルとリディアの魔法陣が、グチャグチャに絡まり合い、ショートを起こしている「絆の成れの果て」があった。


 大介は、砕け散りそうな右拳を突き出し、その中枢へと肉薄する。


 それは、自分の命を賭けて、自分が築き上げた「居場所」を修理するための、絶望的で、しかし一点の迷いもない突撃だった。

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