第175話:再会の祝杯と異世界の風
新宿の夜景を一望できるホテルの最上階。
リディアトレードと日本政府による「国家戦略的パートナーシップ」の調印式を祝うパーティーは、華やかさと、どこか現実離れした高揚感に包まれていた。
タキシードに身を包んだ大介は、次々に挨拶に訪れる政財界の重鎮たちに対し、「まあ、なんとかなるでしょ!」と能天気な笑みを振りまいていた。
しかし、その背中には国家レベルの契約を背負った重圧が、じっとりと冷たい汗となって伝わっている。
その時、会場の中央に設置された特設ポータルが、青白い光を放って脈動した。
「大介さん、皆さまをお連れしました!」
光の向こうから現れたのは、ドレス姿のエイミー。
そして彼女に導かれるようにして、かつての冒険の仲間たちが姿を現した。
「がっはっは! なんだダイスケ、随分と高いところに城を構えたじゃねえか! ここは雲の上か!?」
地響きのような声と共に、巨大な斧を背負ったドワーフのガルガンが、窓の外に広がる新宿の摩天楼を見て目を剥いた。
足元まで広がるガラス窓の向こう、無数の光が明滅する景色は、リディアの王都すら凌駕する異形なまでの文明の輝きを放っている。
「……信じられないわ。魔法の気配がほとんどないのに、この情報密度。この世界の人間は、一体どうやってこの巨塔を維持しているの?」
小柄な魔術師リリーは、浮遊させた魔導書を慌ただしく開きながら、ホテルの豪華なシャンデリアや、人々の持つスマートフォンに鋭い視線を送る。
そして、最後にしめやかに現れたのは、エイミーの親友であるエルフのセレナだった。
「セレナ……!」
エイミーは感極まり、親友の手を両手で握り締めた。
セレナは、かつてリディアで「落ちこぼれの聖女」と蔑まれ、常に誰かの影に隠れて震えていたエイミーの面影を探した。
だが、今のエイミーは違う。大介の隣で背筋を伸ばし、一国の命運を左右する企業の象徴として、凛とした輝きを放っている。
「……エイミー、本当にいい顔になったわね」
セレナの瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。
「あなたが信じた道、そしてあなたが選んだこの人が、あなたをここまで強くしたのね。……再会できて、本当に嬉しいわ」
大介は、少し照れくさそうに頭を掻きながら、三人の前へ歩み出た。
「ようこそ、新宿へ。……と言っても、ゆっくり観光させてやる暇はねえぞ。明日からたっぷり、リディアトレードの『仕事』を手伝ってもらうからな!」
大介の不敵な笑みに、ガルガンは豪快に笑い、リリーは不敵に眼鏡を光らせ、セレナは静かに微笑んだ。
地球の夜景を背景に、異世界の英雄たちが交わる。
それは、リディアトレードが真の意味で「二つの世界を繋ぐ架け橋」へと進化する、輝かしい幕開けの夜だった。




