第162話:最強の布陣と至高の武装
氷室との会談を終え、大介とエイミーは双葉荘へと戻った。
ようやく「入れ替わり」を解き、自分の肉体へと戻った二人は、畳の上で大きく伸びをした。
「……ふぅ、やっぱり自分の体は落ち着きますわね。大介さんの筋肉質な体も悪くありませんけれど、やはり魔力の巡りが違いますわ」
「ああ、お前の体で高飛車に振る舞うのも疲れるし、何よりあのドリルみたいな髪型は、視界の端でずっと揺れてて気になってしょうがなかったんだ」
二人が一息ついているところへ、リビングのドアが勢いよく開いた。
「お帰り! ネットは相変わらずお祭り騒ぎよ。で、政府の女とはどうなったの?」
ノートパソコンを抱えた麻衣が身を乗り出す。
大介は氷室から提示された「ダンジョン調査への同行」について説明した。
「なるほどね。政府としても、実力をその目で確認しない限り、二億の価値がある会社として正式にバックアップはできないってわけか」
「ああ。だが、問題は『どう戦うか』だ」
大介は腕を組み、真剣な表情でエイミーを見た。
「今回の調査には、自衛隊や政府所属のエリート探索者も同行するはずだ。第1回オークションの時みたいに、俺がエイミーの体で空手を振るうわけにはいかない。相手はプロだ、小細工は通用しない」
「ええ、私もそう思っていました。……大介さん。当日は、入れ替わりをせずに挑むべきです」
エイミーの提案に、大介は力強く頷いた。
戦闘において二人のポテンシャルを最大に引き出すには、慣れ親しんだ自分の体で戦うのが一番だ。
「大介さんは前衛で敵をねじ伏せ、私が後方から全系統の魔術でサポートする。これこそが、リディアトレードの『最強の布陣』です。偽物の強さを見せても、政府の連中は納得しないでしょ?」
「そうだな。……だが、今の俺たちの装備じゃ心許ない。特に俺は、この世界では格闘家は足止め程度が限界だからな」
大介は自分の拳を見つめた。空手のキレが増す一方で、物理攻撃は効果が薄い。
「二億稼いだんだ。ここはケチるところじゃない。……明日、装備を整えに行こう」
「賛成です! 私もリディア側で装備は依頼してますし、受け取りに行きます。……大介さん、明日は別行動で最高の準備をしましょう」
麻衣がニヤリと笑いながらノートパソコンを叩く。
「いいわね、軍備拡張! 兄貴は地球側の闇市やギルドで、エイミーさんはリディア側で。それぞれリディアトレードの資本力を思い知らせてやりなさいよ」
新たな戦場を前に、二人はそれぞれの「最高」を求めて動き出すことを決意した。




