第156話:『城』での軍議と、エルフの決意
「……よし。これで全員揃ったな」
双葉荘、大介の部屋。一年前、ここで「合同会社リディアトレード」のパフェを食べた時から、すべてが始まった。
今や月商は500万に達し、純利益も100万を超えている。
二人の生活には十分すぎる稼ぎだが、大介は手元の収支報告書を叩いた。
「麻衣、現状はどうだ?」
大介の妹であり、経理・法務アドバイザーの麻衣が冷静に資料をめくる。
「お兄ちゃん、資金繰りは完璧よ。地球側での定常的なポーション販売、リディア側でのコスメ展開……1回目のオークションで稼いだ資金を原資にして、会社は順調に回ってる。でも……」
「……ああ。売上は立ってるが、『社会的地位』がまだ足りない。ただの羽振りのいい新興企業じゃ、親父を黙らせることはできないんだ」
大介は隣に座るエイミーを見つめた。
新宿ギルドでの第1回オークション以来、掲示板では「謎の銀髪美少女」の噂が絶えない。
「知名度が欲しい。それも、世界が無視できないレベルの圧倒的なインパクトがな」
「それなら、大介さん。……いよいよ、私の出番ですわね」
エイミーが真っ直ぐな瞳で大介を見返した。
「次のオークションで、私が『エルフ』であることを公表しようと思うんです。エルフの国から持ってきた秘宝——魔力を永久に安定させる『霊樹の雫』を目玉商品として」
「なっ……本気か、エイミー!?」
麻衣が声を上げた。これまでは「高飛車な魔女」という設定で誤魔化してきたが、本物の長命種、エルフの存在が公になれば、世界中の研究機関や国家が黙っていない。
「エイミー、それは危険すぎる。お前をそんなリスクに晒したくないんだ」
大介の反対に、エイミーは首を振った。
「大介さんの『城』を、そして大介さんの立場を盤石にするには、リディアトレードが『本物の異世界の窓口』だと知らしめるのが一番です。それに、私には大介さんがついていてくれるのでしょう?」
大介は奥歯を噛み締めた。エイミーの覚悟は決まっている。
なら、自分にできるのはそのリスクを最小限に抑えることだけだ。
「……分かった。だが、一つだけ条件がある。オークション当日、会場に立つのは『入れ替わった状態の俺』だ」
「え? 大介さんが私の体で出る、ということですか?」
「ああ。見た目はエルフのお前だが、中身は俺だ。もし万が一、1回目の時みたいに不埒な輩に絡まれても、返り討ちにできる。エイミー、お前は俺の体で、偉そうに立ち回ってくれ」
大介の提案に、エイミーはふっと柔らかく微笑んだ。
「……ふふ、分かりましたわ。私の中に大介さんがいて、大介さんの中に私がいる……。二人でリディアトレードの未来を切り拓く、というわけですね」
「兄貴がエルフの美少女として気高く振る舞うの、また見なきゃいけないのは勘弁だけど……。でも、確かにそれが一番安全ね」
麻衣がため息をつきながらも、スケジュール帳に書き込んだ。
ターゲットは、来週開催される『第2回・ダンジョンオークション』。
「エルフの実在公表……。明日から、世界がひっくり返るぞ」
「望むところですわ、大介さん!」
古びたアパートの一室で、二人の「相棒」は、再び世界を驚かせるための大きな賭けに出ることを誓った。
「とろこで『霊樹の雫』って言うのはリディアではどんなアイテムなんだ?」大介が聞くと応えるエイミー
「あ、それはお祭りの縁日で良く売ってるおもちゃです。子供たちが良く遊んでいますよ。
消耗品で一時的に少し魔力が上がったって、リディアでは何の役にも立ちませんから。でも日本で使ってみたら凄い魔力が上がったんですよ!」
「ひどい詐欺だな、世界が変われば効果が変わるものもあるってことか。
地球なら少し魔力が上がるだけでも助かるから需要はかなりありそうだ」
三人はこうして期待感に胸を躍らせるのだった




