第154話:元カノとの再開(2)
「お待たせ。大介くんの特製ハンバーグ、ジャンボサイズだよ」
沙織が運んできた鉄板の上で、分厚い肉塊がパチパチと音を立て、デミグラスソースが香ばしく弾けている。
その見事な焼き加減に、エイミーも一瞬だけ毒気を抜かれたように目を見開いた。
「さあ、冷めないうちに食べて。大介くん、昔から私の作るハンバーグには目がなかったもんね」
沙織がさらりと投げかけた言葉に、大介はフォークを持ったまま固まった。
隣から、文字通り「ゴゴゴ……」という効果音が聞こえてきそうな威圧感が漂ってくる。
「……へぇ。大介さん、昔からこの味に慣れ親しんでるんだ?」
「あ、いや……それはその、昔の話で……」
「いいから、食べてみてください。感想、楽しみにしてるから」
エイミーの目は笑っていない。大介は覚悟を決め、肉の一切れを口に運んだ。
「……っ! 旨い……。肉の食感がしっかり残ってて、ソースも深みがあって……」
「でしょ? 大介くん、玉ねぎのシャキシャキ感が残ってるのが好きなんだよね」
沙織が追い打ちをかけるように「元カノとしての理解」を披露する。
大介は思わず「そうそう、これなんだよな」と言いかけて、隣のエイミーの視線に射抜かれた。
「大介さん。正直に答えて。……私のハンバーグと、この『思い出の味』、どっちが美味しいの?」
「ぶふぉっ!」
大介は付け合わせのポテトを喉に詰まらせそうになった。
プロの料理人として、余裕の表情でこちらを観察している沙織。
そして、フォークを今にも折りそうな勢いで握りしめ、答え次第ではアパートの夕食に氷魔法でも使いかねない勢いのエイミー。
「い、いや、エイミー。これはジャンルが違うっていうか……沙織さんのはプロの技術で、お前のは……その、毎日食べても飽きない『相棒の味』っていうか……!」
「逃げないで! 私だって、大介さんの健康とか筋肉のこと考えて、一生懸命作ってるんだよ!? それを『思い出』補正なんかに負けるわけにいかないもん!」
エイミーはそう叫ぶと、自分の分のハンバーグを勢いよく口に放り込んだ。
「……っ!? ……むぐ……っ」
「……エイミー?」
「……悔しいけど、美味しい……」
悔しさに涙目になりながらも味を認めてしまうエイミーを見て、沙織はクスクスと肩を揺らした。
「あはは! 本当に面白い子だね。大介くん、こんなに真っ直ぐな子に想われて、幸せ者じゃない」
「……もう、サオリさんでしたっけ。次は絶対に負けませんから! 今日の味、完全にコピーして、さらにその上をいってやるんだから!」
エイミーの宣言に、沙織は「いいよ、挑戦受けて立つ」と頼もしく頷いた。
かつての恋人と、今のパートナー。大介の胃袋を巡る戦いは、いつの間にか「料理への情熱」を燃料にして、さらに熱く燃え上がろうとしていた。




