第151話:守られる側から、守る側へ
王都での騒乱が嘘のように、レイン家の屋敷には穏やかな空気が流れていました。
かつては「居場所がない」と嘆いていたエイミーでしたが、今は家族と食卓を囲み、大介を紹介しながら、これまでの冒険を誇らしげに語っています。
「英雄がついていてくれるなら、父さんも安心だ。……大介殿、妹をよろしく頼む」
エドワードが真剣な面持ちで頭を下げれば、ロバートも「娘に相応しい男かどうか、これからも見極めさせてもらうぞ」と、不器用ながらも大介を家族の一員として受け入れていました。
エイミーの実家で一晩過ごし、久しぶりに家族の温もりに触れた二人は、再び「交差ダンジョン」を越えて地球へと戻ってきました。
新宿のアパート。慣れ親しんだ狭い部屋に、エイミーが淹れたお茶の香りが漂います。
「……ふぅ。やっと一息つけましたわね」
「ああ。……でも、休んでばかりもいられないな。リディアでAランクになったんだ。こっち(地球)のギルドでも、早く実力を認めてもらわないと」
大介はリビングの窓から見える新宿の街並みを見つめ、拳を握りしめました。
「エイミー、俺、こっちでもAランクを目指そうと思う。リディアの時みたいに、お前の家の名前を背負うわけじゃないけど……お前をずっと守っていけるくらいの力が、この世界でも必要なんだ」
大介の言葉は真っ直ぐで、責任感に満ちていました。
けれど、その背負い込もうとする気負いを感じ取ったのか、エイミーはそっと大介の背中に手を添えました。
「大介さん。……あまり一人で抱え込まないでくださいまし」
「え?」
「リディアでは、あなたが私を導き、家族との絆を取り戻してくれました。……でも、ここは私の得意な『魔法』が、リディア以上に猛威を振るう世界ですわ」
エイミーは大介の前に回り込むと、彼の大きな手を両手で包み込み、悪戯っぽく、けれど力強い瞳で微笑みました。
「いいですか? 何でも一人で背負って、ボロボロになって……老化魔法まで受けてしまうような無茶は、もう許しません。……こちらの世界では、私があなたを守ります。私を、もっと頼ってくださいな」
「エイミー……」
「私は、あなたの背中を守るだけの女ではありません。隣に立って、一緒に未来を穿つパートナーなのですから」
エイミーの言葉は、かつての自信なげな少女のそれではありませんでした。
大介は苦笑しながらも、「……そうだな。頼りにしてるよ、エイミー」と答えました。
夕闇が迫る新宿の空。二人は、どちらかが守るのではなく、互いに支え合う本当の意味での「相棒」として、次なる高みを目指す決意を固めたのでした。




