第142話:螺旋と連撃の極地
「――まだです、大介さん! 足運びが甘いです」
森の修練場に、エイミーの鋭い叱咤が飛びます。
かつてのエイミーは、後方から高火力の魔法を叩き込むだけの「砲台」でした。
しかし、大介と入れ替わり、彼の肉体で死線を潜り抜けてきた経験が、彼女の戦い方を劇的に変貌させていました。
「分かってる……ッ!」
大介が地面を蹴り、ガルガンの重厚な盾へと肉薄します。
それと同時に、エイミーの魔力が編み上げられました。
彼女が選択したのは、かつて大介が彼女の体で好んで使っていた、「髪を伸ばす魔法」大介が言う**「シルバースパイク」**の応用術。
「展開……! 『螺旋連穿』!」
エイミーの銀髪が魔力によって硬質化し、無数の鋭いドリルとなって空中を舞います。
それは大介の放つ正拳突きの軌道を追い越すように、ピンポイントでガルガンの盾の「継ぎ目」や「重心の支点」を打ち抜いていきます。
「おっとぉ!? 狙いが正確すぎて、防ぐ隙がねえぞ!」
ガルガンが悲鳴を上げます。エイミーの魔法は、もはや広範囲を焼き払う無駄な物量ではありません。
大介から学んだ空手の「足運び」と「最短距離の打撃」という概念を取り入れ、相手の急所だけを最小限の予備動作で、しかし圧倒的な物量で貫く――。
それは、武術の精密さと、魔法の理不尽さを融合させた独自のスタイルでした。
「はぁっ!」
大介の拳が、エイミーのドリルが切り開いた僅かな隙間に突き刺さります。
魔力を練り込んだ正拳は、今や岩をも容易に粉砕する破壊力を秘めていました。
「……そこまで!」
リリーの声で、四人の動きが止まりました。
リリーは感嘆の溜息を漏らしながら、二人を見つめます。
「驚いたわ。エイミー、あなたの魔法……『詠唱』速度がずば抜けている。そしてダイスケの動きに完全に同調してる」
「……ええ。大介さんの体で戦っていた時、感じたの。魔法とは、ただ唱えるものではなく、体の一部として『振るう』ものなのだと」
エイミーは少し汗をかいた額を拭い、誇らしげに胸を張りました。
以前の自信のないエイミーはどこにもありません、その瞳には、確かな信念が宿っていました。
一方の大介も、自分の拳をじっと見つめていました。
エイミーという最高の師でありパートナーを得て、彼の「魔法空手」は、リディアの既存の武技を遥かに凌駕する領域――破格の強さへと到達していました。
「これなら……王都の武闘大会でも、通用するはずだ」
「通用する、ではありませんわ。……蹂躙して、分からせてやりましょう。大介さんの……そして、私たちの真価を」
夕闇に包まれる修練場。互いの技術を高め合った四人の絆は、かつてないほど強固なものとなっていました。




