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第140話:決別と覚悟

エイミーの隠れ家。大介と共に報告会をしていた

その穏やかな午後の静寂は、飛竜の羽音と軍靴の響きによって無残に塗り潰されました。


「この音は……たぶん私の家族だと思う」


大介とお茶を楽しんでいたエイミーの表情が、一瞬で鋭い「魔法使い」のそれに変わります。


銀髪を揺らして玄関へ向かう彼女の隣に、大介も無言で立ちました。


今の彼には、Aランク冒険者としての揺るぎない威圧感が備わっています。


扉を開けると、そこには厳格な面持ちの父ロバート、完璧な騎士を体現する長男エドワード、そして冷笑を浮かべた次男ヴァルディスが立っていました。


「エイミー、迎えに来た。……その小汚い男から離れ、大人しく家に戻れ。アルフレッド殿との婚約はまだ生きている」


ロバートの威圧的な声。かつてのエイミーなら、この声だけで足が震え、暗い部屋の隅に逃げ込んでいたことでしょう。


しかし、今の彼女には、自分の背中を支える大介の温もりがあります。


「お断りします、お父様。私はもう、家の再興のための『道具』ではありません」


「黙れ! 落ちこぼれが分をわきまえろ!」


ヴァルディスが魔法剣を抜き放ち、挑発するように魔力を練り上げました。


「戦士でまなく、魔法使いとしても中途半端なお前に何ができるって言うんだ。俺が本当の格付けを教えてやるよ!」


ヴァルディスが地を蹴り、鋭い一撃を繰り出します。


しかし、エイミーは杖を構えることすらありませんでした。


「――今の私に、そんななまくらな剣は届きませんわ」


エイミーが軽く指を弾くと、地面から巨大な銀のドリルが猛然と突き出しました。


ヴァルディスの魔法剣をはじき飛ばし、その勢いのまま彼を空高く跳ね飛ばします。


「なっ……!? あれが……エイミーだと!?

油断していたとわ言え、あんなに魔法の起動が早かったか?」


ロバートが驚愕に目を見開きました。


「騎士の家系に生まれたのに武力がない落ちこぼれ」と蔑んでいた娘が、今、自分たちが誇る騎士の力を赤子のようにあしらったのです。


「そこまでだ。……これ以上彼女を傷つけるなら、俺が相手になる」


大介が一歩前に出ると、周囲の空気が物理的な重圧を伴って軋みました。


Aランク冒険者だけが放つ、濃密で圧倒的なマナの奔流。エドワードもロバートも、その威圧感に一歩後退せざるを得ませんでした。


「父上……この男、ただの冒険者ではありません。このプレッシャー……まさか、先日Aランクになったという戦士か……!?」


戦慄するエドワードを制し、エイミーは父を真っ直ぐに見据えました。


「お父様。アルフレッドさんとの結婚は、私の人生を殺すことと同義です。私は、私の人生を……この大介さんと共に、私の意志で生きることを決めました!」


「……貴様、家を裏切るというのか……!」


「いいえ。家を捨てるのではありません。私が、レイン家の『名誉』を私のやり方で再興してみせます。……ですから、もう私の邪魔をしないでくださいませ!」


圧倒的な魔法の腕前、そして彼女を支える英雄の存在。


力こそが正義のレイン家において、エイミーはもはや「従わせるべき弱者」ではないことを、ロバートは認めざるを得ませんでした。


「……仕方ない、勝手にしろ。だが、二度と敷居を跨げると思うな」


父は渋々と、しかし娘のあまりの変貌に戦慄を隠せないまま、撤退を命じました。 


飛竜たちが去り、静寂が戻った庭で、エイミーは張り詰めていた糸が切れたように、大介の腕に身を預けました。


「……言えましたわ。大介さん……私、自分の言葉で……」


「ああ。最高にかっこよかったぞ、エイミー」


二人は、夕闇に染まる森の中で、ようやく手にした本当の自由を噛み締めていました。

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― 新着の感想 ―
こんばんは。 ようやくしがらみから解き放たれましたね…良かった良かった。
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