第139話:報告会
新宿から交差ダンジョンを経て、リディアの自分の家に戻ったエイミーは、玄関先で深呼吸をして、ようやく肩の力を抜きました。
つい先ほどまでギルドで演じていた「高圧的な魔女」の仮面を脱ぎ捨て、本来の彼女に戻る瞬間です。
「……ただいま戻りました、大介さん」
リビングでは、一足先にAランクへの昇格を終えた大介が、二人分の温かいお茶を淹れて待っていました。
テーブルには大介がリディアで手に入れた新しいギルドカードが置かれています。
「おかえり、エイミー。……その様子じゃ地球のダンジョンは楽勝だったみたいだな」
大介の言葉に、エイミーは少し気恥ずかしそうに目を伏せ、大介の隣に座りました。
「ええ……。北川さんには驚かれましたが、この世界の魔物は、リディアに比べればずっと戦いやすかったですわ。……なんて言うのかな、魔法使いがこの世界で評価されるのも分かる気がしました。大介さんのように拳を振るわなくても、私のド魔法で、皆塵になって消えていきましたわ」
「そうか。……お疲れ様、エイミー。怖くはなかったか?」
大介が優しく問いかけると、エイミーはふっと表情を和らげ、大介の逞しい腕にそっと自分の手を重ねました。
「……少しだけ。でも、今の私には大介さんがいます。もう一人で震えていた頃の私ではないから。……それに見てください、大介さん」
エイミーは、大介がテーブルに置いたAランクのカードを愛おしそうに指先でなぞりました。
「これで大介さんは名実ともに、リディアでも私の隣に堂々と立てる英雄(Aランク)になりましたね。……大介さんがリディアで居場所を築いてくれたことが、私には何より嬉しいんです」
「ああ。……正直、Aランクになった実感はまだ薄いけどな。でも、これでエイミーの家(名誉)を取り戻すための準備は整った。……俺たちの『二人で歩む』って決めた道、一歩ずつ進んでるな」
大介が無骨ながらも力強く答えると、エイミーは大介の手に自分の指を絡め、幸せそうに微笑みました。
「ええ。二百年後の孤独に怯えるより、今、この世界で大介さんと一緒に強くなっていく。それが今の私の、一番の願いです」
二人の間には、かつての老化ダンジョンを乗り越えた時と同じ、確かな絆の熱が灯っていました。
地球のダンジョンで見せた圧倒的な武力と、リディアで手にした最高の栄誉。二つの世界の力を携えた二人の物語は、ここからさらに加速していきます。




