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第133話:最終試験、精神の深淵(と焦燥)

ギルドの大広間は、三人のAランク昇格を祝う冒険者たちの歓声で揺れていました。


最高級の樽が次々と開けられ、香ばしい肉の焼ける匂いが充満しています。


「がははは! 見ろよ、この輝き! 『A』の文字が眩しくて目が潰れそうだぜ!」


ガルガンがジョッキを片手に、誇らしげに新しいギルドカードを掲げています。


周囲の冒険者たちからも「リディアの若き獅子」


「最強の盾」と野次馬混じりの賞賛が飛び、酒場はさながら祭りのような騒ぎでした。


一方、リリーは喧騒から少し離れたカウンターの隅で、静かにエールを口にしていました。


「……大介。あんた、本当に行くのね」


ふいに隣に座った大介に、リリーが視線を向けずに問いかけました。


その声には、昇格の喜びとは別の、鋭い寂寥感が混じっていました。


「ああ。……少し、遠くまでな。俺には、どうしても帰らなきゃいけない場所があるんだ」


「……その場所には、あんたの言っていた『守りたいやつ』がいるんでしょ? あのおどおどしてた時期のあんたに、魔法を教え込んだ……、でもあんたが命を懸ける価値のある誰かが」


大介は驚き、苦笑しました。リリーの洞察力には、やはり敵いません。


「……隠し通せると思ってなかったよ。リリー、あんたには感謝してる。俺が俺でいられなくなりそうな時、いつもあんたの矢が道を指してくれた」


「……馬鹿ね。あんたが前しか見てないから、私が背中を掃除してただけよ」


リリーはふいっと顔を背けましたが、その耳たぶは少し赤くなっていました。

彼女はジョッキを大介の方へ突き出します。


「いいわ、行きなさい。でも、忘れないで。あんたがどこで何をしていようと、あんたはこのパーティの一員よ。……行き詰まったら、いつでも呼びなさい。地獄の果てまで射抜いてあげるわ」


「ああ……最高の相棒だよ、リリー」


カチン、とジョッキが重なり、澄んだ音が響きました。


その時、泥酔したガルガンが

「おい大介ぇ! 次の依頼はドラゴン退治か!? それとも魔王討伐か!?」と肩を組んできました。


二人の相棒の笑顔を見て、大介は胸の奥が熱くなるのを感じていました。


(……この世界に来て、本当によかった。ガルガン、リリー。お前たちと出会えたから、俺は強くなれた)


Aランク。それは単なる称号ではなく、この世界で「生きた証」そのものでした。


大介はそっと胸元の銀のチャームを握りしめました。


「さて……そろそろ時間だな。……エイミー、待たせたな。今、帰るぞ」


祝宴の騒ぎを背中に、大介は月明かりの差し込む出口へと歩き出しました。 その足取りには、以前のような迷いはなかった。


Aランクという最高峰の力、そして魔法と空手を融合させた唯一無二の技。全てを携え、彼はついに、自分の「本当の城」へと繋がる扉を開きました。

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