第132話:魂の選別、氷上のボケとツッコミ
第二試験を突破した三人を待っていたのは、ギルド最深部の「賢者の間」でした。
本来、最終試験である『精神鑑定』は個人で行うものですが、パーティでの同時昇格を志願した大介たちには、異例の**「集団鑑定」**が課せられることになったのです。
「……三人で円になり、座すがよい。これより、お前たちの魂の繋がりが『本物』か、あるいは『依存』かを問う」
老監督官の声と共に、周囲の景色が鏡のような水面へと変貌しました。
「……大介、なんか変な感じだぜ。俺の体が透けて見えるような……」
「落ち着けガルガン。……リリー、手を出せ」
三人が手を繋いだ瞬間、精神空間に巨大な影が現れました。
それは、彼らがこれまで倒してきた魔物たちの怨念が混ざり合ったような、禍々しい巨影でした。
「『……何のために戦う。名誉か? 金か? それとも、隣にいる者を踏み台にするためか?』」
影の問いかけと共に、リリーの脳裏に「大介とガルガンが自分を見捨てて先に進む」幻影が、ガルガンの脳裏には「自分が弱すぎて二人を死なせる」絶望が、そして大介の脳裏には「二人がエイミーの秘密を知り、自分を軽蔑して去っていく」光景が映し出されます。
「……ふん、安っぽい幻影ね」
リリーがいち早く口を開きました。彼女の瞳には、迷いはありません。
「踏み台? 冗談言わないで。この二人は、私が一番美味しいところを射抜くための『最高のデコイ』よ。見捨てるわけないじゃない」
「ガハハ! 俺もだ! 俺が死ぬ時は、この二人の盾になって死ぬ時だけだぁ! 弱すぎて二人を死なせる? 笑わせんじゃねえ、俺の筋肉を誰だと思ってやがる!」
二人の力強い言葉に、大介は思わず苦笑しました。 自分の「秘密」に対する不安すらも、二人の圧倒的な信頼の前では小さな塵のように思えました。
「……そうだな。俺も、こいつらを騙してるつもりはない。いつか全部話すと決めた相棒だ。ここで立ち止まってる暇なんてないんだよ!」
大介が叫ぶと同時に、三人の繋いだ手から眩いばかりの光が溢れ出しました。
個々の精神的な弱さを、他者の信頼が補い、増幅させる。
それはまさに、ギルドが求めていた「Aランク・パーティ」の理想像そのものでした。
「『……絆の真実、確かに見届けた。行け、リディアの新たな伝説よ』」
巨影が光の中に溶け、精神空間がパリンと砕け散りました。
目を開けると、そこは元の応接室でした。
老監督官は深く頷き、三人の前に新しいギルドカードを差し出しました。
「おめでとう。本日よりお前たちは、リディア冒険者ギルド公認の**『Aランク・パーティ』**だ」
「よっしゃああああ!! やったぜ大介、リリー!!」
「……もう、心臓に悪いわよ。昇格祝い、とびっきりの高い酒を奢ってもらうからね!」
ガルガンが大介を担ぎ上げ、リリーがそれを見て笑う。
大介は、自分の胸元で光るカードを見つめました。
これでようやく、エイミーを守るための公的な『力』と『地位』を手に入れた。
「……ああ。最高の祝勝会にしよう」
大介は心からそう思いました。……リディア側の「戦い」は、これでひとまず、最高の形で幕を閉じたのです。




