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第128話:英雄への誓いと、それぞれの理由


酒場の喧騒は続いていましたが、リリーとの短い対話を経て、大介は一つ大きな決断を口にする時が来たと感じていました。

「……ガルガン、リリー。折り入って頼みがあるんだ」

真剣なトーンに、追加の酒を持ってきたガルガンも腰を下ろしました。

「なんだよ、改まって。借金の申し込みか? 俺もあまり持ってねえぞ」

「違う。……さっきも言った通り、俺は最高ランクを目指したい。……二人とも、俺の『Aランク昇格試験』に、パーティとして付き合ってくれないか?」

その言葉に、二人は目を見開きました。リディアのギルド規程において、Aランク試験は個人の武勇だけでなく、統率力と連携を測るための「パーティ単位」での挑戦が義務付けられているからです。それはつまり、付き添う二人も命懸けの試練に足を踏み入れることを意味していました。

「……本気か、大介。Aランクと言えば、この国でも数えるほどしかいない『英雄』の領域だぞ。試験の内容だって、伝説級の魔物との遭遇や、未踏領域の踏破が当たり前だ」

ガルガンが珍しく真剣な表情で問いかけます。大介は力強く頷きました。

「ああ、本気だ。俺一人の力じゃ試験すら受けられない。……二人の力を貸してほしいんだ」

沈黙が流れた後、最初に笑い出したのはガルガンでした。

「ガハハハ! 当たり前だろうが! 男に生まれたからには、一度は『英雄』なんて称号、夢見るに決まってんだろ! お前がその気なら、俺のこの斧がお前を頂上まで押し上げてやるよ!」

ガルガンが豪快に大介の背中を叩きます。その瞳には、相棒への厚い信頼と、武人としての野心が燃えていました。

「……私は、あんたほど夢見がちじゃないけど」

リリーが、少し伏せ目がちにジョッキの縁をなぞりました。

「でも、Aランクのパーティに名を連ねれば、入ってくる報酬の桁が違うわ。……母親の病気、もっといい薬を飲ませてあげたいの。そのためには、いつまでもBランクの依頼で小銭を稼いでる暇はないわね」

リリーは顔を上げ、挑戦的な笑みを大介に向けました。

「いいわ、付き合ってあげる。その代わり、死なせたりしたら化けて出てやるから」

「……ありがとう、二人とも」

大介は胸の奥が熱くなるのを感じました。

一人は「夢」のために。一人は「家族」のために。そして自分は、大切な「彼女」を守るために。

「よし、決まりだ! 今夜は飲むぞ! 未来の英雄パーティに乾杯だ!」

ガルガンの号令で、三つのジョッキが再び力強くぶつかり合いました。

それぞれの重いを乗せた『Aランクへの道』。それは、ただの昇格試験を超えた、三人の新たな絆の物語の始まりでした。

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