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第119話:母の急襲と、バリケード越しの再会

ある日の午後、大介が「双葉荘」でエイミーと共に次の探索の準備をしていた時のことです。


静かなアパートの廊下に、突如として場違いなほど軽やかな足音が響き渡りました。


そして、ドンドンドン! と激しくドアが叩かれます。


「大介! 大介、いるんでしょ! お母さんよ! 心配して様子を見に来たのよ!」


その声を聞いた瞬間、大介の顔から血の気が引きました。


「げっ……お袋!? なんでこんな急に……!」


「大介さん、どなたですか? 敵襲ですか?」


エイミーが怪訝な顔で杖を構えますが、大介は慌ててそれを制止します。


今の玄関は、異世界からの刺客や魔物の侵入を防ぐため、家具や鉄板を組み合わせてガチガチに固めた**「バリケード」**の状態。


とてもではありませんが、過保護な母を招き入れられる光景ではありません。


「悪い、エイミー! ちょっと隠れててくれ! 敵より厄介なのが来た!」


大介はドア越しに必死で叫びました。


「お、お袋! 今ちょっと、部屋の掃除……いや、工事中で開けられないんだ! すぐ行くから、駅前のファミレスで待っててくれ! 頼むから!」


十分後。大介は駅前のファミレスで、心配そうにハンカチを握りしめる母・戸田美香と向かい合っていました。


「もう、連絡もよこさないで。あんなボロアパートで……ちゃんとご飯食べてるの? スーパーのレジ打ってても、あんたの好きな惣菜を見ると、つい涙が出ちゃうんだから」


「……ああ、元気だよ。心配かけさせて悪かったな」


大介は、かつての倒産による無職生活から抜け出し、今は「冒険者」として一旗揚げている証拠を見せることにしました。


彼は鞄から、換金したばかりのまとまった額の通帳と、成功の報酬である高級な健康食品を取り出し、テーブルに置きました。


「お袋。俺、今はまともな……いや、かなり稼げる仕事を始めたんだ。仲間もいる。だから、もう心配しなくていい」


美香は目を見開き、記載された桁外れの数字と、以前の自信なさげな姿とは違う、逞しくなった息子の顔を交互に見つめました。


「……そう。大介が、自分の道を見つけて幸せなら……お母さんは、それが一番嬉しいわ。でも、ダンジョンなんて危ないところには行かないでね?」


美香はそう言いながらも、どこか安心したように微笑みました。


しかし、大介はすぐに真剣な表情に戻り、念を押します。


「……あ、あと、このことはまだ親父には言わないでくれ。あいつに知られると、『冒険者なんて博打だ』って、また説教が始まるからな」


「ふふ、誠一郎さんには内緒ね。あの人は頑固ですものね……。でも、いつかちゃんとお話しなさいよ? 良いお相手ができたら、すぐ教えてね。麻衣ちゃんに先を越されちゃうんだから!」


母を見送り、アパートに戻る道すがら、大介はふと空を見上げました。


安定を求める父、結婚を急かす母、そして優秀な妹。


家族のプレッシャーは相変わらず重いけれど、今は「城」で待つエイミーという存在が、大介にとっての新しい支えになっていました。

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