第115話:灯る明かり、交わす決意
騒がしかった老化ダンジョンでの出来事から数日。
エイミーの異世界の家には、珍しく数人の客が集まっていました。
主賓は、エイミーの親友であるセレナ。
そして、地球側の協力者であり、大介とも縁の深い麻衣。
さらに、どこか落ち着かない様子でソファの端に腰掛ける大介の姿もあります。
「……というわけで。私と大介さんは、これからも二人で歩んでいくことに決めました」
エイミーが少し頬を染めながらも、凛とした声で宣言しました。
テーブルの上には、大介が地球から持ち込んだお菓子と、エイミーが淹れた最高級の茶葉の香りが漂っています。
「あら。あの暗い部屋で震えていたエイミーが、こんなに立派な顔をするようになるなんて。私の魔法も、たまには役に立つものね」
セレナは優雅に茶を啜りながら、悪戯っぽく微笑みました。
彼女の視線は大介へと向けられます。
「大介さん、覚悟はできていますか? この子は一度言い出したら聞きませんよ。あなたの短い一生、文字通り骨の髄まで彼女に使い果たされることになるけれど」
「……ああ。老化魔法でじいさんになった姿を見せても、こいつは手を離さなかったからな。これ以上の覚悟なんて必要ねえよ」
大介が頭を掻きながら答えると、隣にいた麻衣が「ぷっ」と吹き出しました。
「あはは! さすが大介さん。プロポーズの代わりに老化魔法を受けるなんて、世界広しといえどもお兄ちゃんくらいだって。でも、安心したよ。エイミーさんのあの真っ直ぐな瞳、今の二人ならどんな時間の壁も飛び越えていけそうですね」
麻衣の明るい声に、部屋の空気がふわりと和らぎました。
「麻衣さん、ありがとうございます。セレナも、背中を押してくれて感謝しています。……私、これからはもう、未来を数えて怯えるのはやめにします」
エイミーは、そっと自分の隣にある大介の分厚い手に、自分の手を重ねました。
「二百年後の孤独を嘆くより、今日この一瞬、大介さんの隣で笑うことを選びます。それが私の、一生解けない最高の魔法ですから」
大介は照れ隠しに「お茶、冷めるぞ」と無骨に返しましたが、その大きな手は、エイミーの指先を力強く握り返していました。
窓の外には、異世界の静かな夜空が広がっています。
かつては冷え切っていたこの部屋に、今は確かな熱が灯っていました。
種族も、生きる時間も、住む世界も違う四人。
けれど、この小さな「報告会」で交わされた絆は、どんな伝説の魔導書にも記されていない、新しい物語の始まりを告げていました。




