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106話 兄と妹、ファミレスでの「作戦会議」


「……で、あのエイミーちゃんと急に連絡が取れなくなった、と」


都内のファミレス。麻衣はドリンクバーのメロンソーダを啜りながら、兄の切実な相談を、半分呆れたような、半分面白がっているような顔で聞いていました。


「ああ。遊園地まではあんなに楽しそうだったんだ。なのに翌日からピタリと返事がない。……俺、何かマズいことしたか?」


「お兄ちゃん、デリカシーの塊みたいな筋肉してるもんね。でも、私があの日会った時のエイミーちゃんの様子を思い出すとさ……あの子、お兄ちゃんを嫌いになったんじゃなくて、**『怖くなった』**んじゃないかな」


「……怖い? セレナと同じ結論なんだな」


大介が眉を寄せると、麻衣は真剣な表情で身を乗り出しました。


「あの子、エルフでしょ。前にお兄ちゃんがいない時にチラッと言ってたんだよ。『人族は瞬きする間にいなくなるから、深く関わっちゃダメなんです』って。自分に言い聞かせるみたいにさ」


大介は、手元の冷めたコーヒーを見つめました。


エイミーが頑なに「人族なんて恋愛対象外」と言い張っていた理由。


それが軽蔑ではなく、自分を守るための精一杯の防護壁だったことに、ようやく気づかされたのです。


「エイミーちゃんにとって、お兄ちゃんと過ごす時間は眩しすぎたんだよ。でも、眩しければ眩しいほど、それが消えた時の暗闇が怖くなる。お兄ちゃんの寿命が自分よりずっと短いって現実を、遊園地で幸せを感じた分、突きつけられちゃったのかもね」


「……寿命の話か。アイツ、そんなことを気に病んでたのか」


「彼女はお兄ちゃんがいなくなった後の何百年を想像して、耐えられなくなっちゃったんだよ。だから、傷つく前に自分からシャッターを下ろした。……臆病だけど、それだけお兄ちゃんのことが本気で好きって証拠だよ」


麻衣は、兄の大きな手をポンと叩きました。


「お兄ちゃん、筋肉だけじゃなくて、ちゃんと心もバルクアップさせなよ。言葉にしなきゃ伝わらないよ。彼女の『時間』に対する恐怖を、お兄ちゃんの『今の熱量』でねじ伏せてきなよ!」


「……心も、バルクアップか。お前、たまにいいこと言うな」


「でしょ? 相談料は、今度エイミーちゃんを連れてきた時に豪華なディナー奢ってくれることで手を打つから。……頑張ってね、お兄ちゃん。あの子を一人にしちゃダメだよ」


妹の言葉に背中を押され、大介の瞳に迷いが消えました。


寿命がどうだの、種族がどうだの、そんな不確定な未来のために、今隣にいたいという感情を殺す必要はない。


「……サンキュ。行ってくるわ」


大介は勘定を済ませると、足早に店を出ました。


向かう先は、自分たちの「城」の向こう側。


自分の殻に閉じこもっている、世界で一番不器用な魔法使いの元へ。

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