103話:あまりに早すぎる「さよなら」
遊園地の翌朝。エイミーは昨日の思い出を小瓶に詰めるような気持ちで、ポーションの在庫整理をしていました。
しかし、その穏やかな時間は、親友セレナの突然の訪問によって打ち砕かれます。
「エイミー、急にごめんなさい。……あなたに、伝えておかなくてはいけないことがあって」
扉を開けた先にいたセレナは、見たこともないほど沈痛な面持ちでした。
「……学園時代の、あの先生が亡くなったわ。今朝、知らせが届いたの」
「え……?」
エイミーの手が止まりました。
数日前、自分の体に戻った時に街で偶然会ったばかりです。「いい目をするようになった」と笑ってくれた、あの温かな眼差し。
「嘘でしょう? 数日前にお会いした時は、あんなに元気そうに歩いて……」
「……老衰よ、エイミー。人族の七十歳だもの。私たちにとっては『つい先日』でも、彼らにとっては、もう人生の幕を閉じるのに十分な時間が流れていたのよ」
エイミーの頭の中が真っ白になりました。
昨日、大介が「百五十年は現役でいてやる」と笑ってくれた顔が、急に遠い幻のように感じられました。
「……早すぎます。そんなの、あんまりです。だって、私はまだ先生に、今の私がどれだけ幸せか、ちゃんと報告もできていないのに」
「それが人族なのよ。彼らの命は、私たちが魔法の一節を唱える間に燃え尽きてしまうほど、短くて、儚いものなの」
セレナはエイミーの震える肩を見つめ、静かに、けれど逃げ場のない真実を突きつけました。




