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104話予感されていた「種族の壁」

部屋に重苦しい沈黙が流れる中、セレナはため息混じりに椅子へ腰を下ろしました。


彼女の瞳には、親友の幸せを真剣に願うからこその、複雑な光が宿っています。


「……エイミー。あなた、以前言っていたわよね。『人族なんて、瞬きする間にいなくなる。恋愛対象になんてなり得ない』って」


「それは……」


「やっぱり、こうなってしまったのね。私はいつか、あなたがその『命の速さ』に絶望する日が来るんじゃないかって、ずっとどこかで予想していたわ」


エイミーの瞳から、大粒の涙が溢れ出しました。


かつての自分は、人族を「儚い観賞植物」のように見ていたのかもしれません。


けれど今は違う。


大介の熱を知り、その分厚い胸板に預けた重みを知ってしまった。


「……そうです。私が馬鹿でした! 人族なんて、好きになるんじゃなかった! これから何百年も、大介さんを失った後の世界で私だけが取り残されるなんて、そんな地獄、耐えられません!」


「エイミー。大介さんは今、あなたが戻るのを待っているのよ。あのアパートで」


「待っていてほしくない! ……いえ、違うんです。これ以上、彼を好きになりたくないんです! 好きになればなるほど、失う時の恐怖で頭がおかしくなりそう……!」


エイミーは、昨日大介と笑いながら選んだブラウスの袖をぎゅっと握りしめました。


大好きなのに、大切なのに、その終わりが見えてしまう。


「帰ってください、セレナ。……私、決めました。大介さんとは、もう距離を置きます。あのアパートへも、もう行きません。最初から一人でいれば、失う苦しみなんて味わわなくて済むんです!」


「エイミー! 逃げることがあなたの幸せなの!? あなたが閉じこもっていた暗い部屋に、また戻るつもり?」


セレナが叫びましたが、エイミーは耳を塞ぎ、激しく首を振りました。


「お願い、一人にして……!」


親友の必死な拒絶に、セレナはそれ以上言葉をかけることができず、ただ悲しげな目を向けて部屋を去りました。


静まり返った部屋で、エイミーは床に崩れ落ちました。


大好きだからこそ、終わりが怖い。


魔法では止めることのできない「時間」の残酷さに、エイミーは自ら心の「城」を閉ざし、暗闇の中へと潜り込んでしまいました。

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