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102話 夢の終わり

遊園地での夢のような一日は、ボロアパートの一室で静かな余韻へと変わっていました。


大介は昨日買い込んだ「戦利品」である、少し歪な形をしたペアのマグカップに温かい紅茶を淹れました。


エイミーはネズミのキャラクターがプリントされたクッションを抱きしめ、すっかりお気に入りの指定席となったパイプ椅子でくつろいでいます。


「ふふ、見てください大介さん。この写真、私があまりの速さに顔を歪ませている瞬間のものです。魔法使いの威厳も何もありませんね」


エイミーがスマートフォンの画面を見せながら笑うと、大介も身を乗り出して覗き込みました。


「お前、この時『重力が家出した』とか叫んでたからな。周りの客が二度見してたぞ」


「仕方ありません! あんな理不尽な動き、浮遊魔法の感覚を真っ向から否定しています。でも……不思議と、もう一度乗ってみたいと思ってしまうから悔しいです」


大介は笑いながら、自分の分のマグカップを手に取りました。


「いいんじゃないか? また行けば。このアパートも俺たちの持ち物になったんだ。ポータルの維持だって、お前が稼いでくれた金で万全だ。次はもっと空いてる日を狙って、全部の乗り物を制覇してやろうぜ」


「全部……! それはやりがいがありますね。次は私も、あの『ネズミの耳』を恥ずかしがらずに、ゲートをくぐった瞬間に装着することにします」


「はは、気合入ってるな。……おい、そろそろ時間じゃないか?」


壁の時計を見ると、いつの間にか夜も遅い時間になっていた。


エイミーは名残惜しそうにクッションを置き、ゆっくりと立ち上がりました。


「……はい。あちらの世界でも、リディア・トレードの仕事が溜まっていますから。ガザルさんにも、新しい商品を届けないと」


エイミーは交差ダンジョンの入り口である、揺らめく光の境界線へと歩み寄りました。そして、ふと足を止めて振り返ります。


「大介さん。今日のお礼に、次は私の世界の『絶景』を見せてあげますね。人族の街にはない、魔力が結晶化した美しい森があるんです」


「おう、楽しみにしてる。……あっちでも、あまり無理すんなよ。何かあったらすぐ俺を呼べ」


「ええ。私たちの『城』の守りは、大介さんに任せましたよ。……それでは、また!」


エイミーは花が綻ぶような笑顔を見せ、軽やかに光の中へと消えていきました。


静かになった部屋で、大介は残された二つのマグカップを見つめました。


少し前まではただのボロアパートの一室だった場所が、今は確かな温もりを持つ拠点になっています。


「……さて、次に来る時までに、良い菓子でも買っておくか」


大介は独り言をこぼしながら、エイミーの座っていた椅子をそっと整えました。


窓の外には、昨日二人で眺めた夕焼けよりも、どこか明るい夜空が広がっていました。

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