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98話嵐の予感は銀髪の目覚ましと共に

ここからジェットコースター始まります。

皆様振り落とされないように


「起きてください、大介さん! 朝です! 太陽がもうあんなに高いところまで……あ、カーテンが閉まっていて見えませんね。とにかく起床です!」


大介の意識は、耳元で鳴り響く鈴を転がしたような声と、無遠慮に揺さぶられる肩の振動で強引に引きずり戻されました。


おそるおそる薄目を開けると、そこには昨日一緒に選んだばかりの白いブラウスに身を包み、鼻息荒くこちらを覗き込むエイミーの顔がありました。


「……ん、ああ? エイミーか……。まだ、外は静かじゃねえか……」


「何を言っているんですか。もう午前六時を回っていますよ! 異世界の魔法使いは、魔力の高まる夜明けと共に活動を開始するのが常識です!」


「ここは日本だ。常識以前に、遊園地の開園は9時なんだよ。せめてあと1時間は寝かせろ……」


大介が重い枕を頭に乗せて再び微睡みの中へ逃げ込もうとした、その時です。枕の隙間から、肌を刺すような冷ややかな気配がスウッと忍び込んできました。


「いいんですか? 二度寝をするなら、この部屋を素敵なスケートリンクに改造して差し上げます。大介さんはそのまま、冬の彫像として飾ってあげますね」


「わかった、わかったから! 杖をこっちに向けるな! 氷結魔法の朝イチ発動は心臓に悪いだろ!」


跳ね起きるように身を起こすと、大介は呆れ顔で彼女を仰ぎ見ました。


エイミーはカバンをしっかりと抱え、今にも部屋を飛び出しそうな勢いでつま先をトントンと鳴らしています。


「……お前、遠足前の小学生かよ。待ちきれなくて早く来すぎだ」


「待ちきれないなんて……そ、そんなことはありません! 私はただ、不規則な大介さんの生活習慣を正してあげようという慈悲の心で……」


そう言い張る彼女ですが、隠しきれない期待で頬が緩んでいます。


「楽しみ」という文字が顔に書いてあるようなものです。


「まあいい、そこまで言うなら準備するか。シャワー浴びてくるから、そこで大人しくパンでも食べてろ」


「また子供扱いして! でも、急いでくださいね。私が魔法で無理やり時間を進めてしまう前に!」


「そんな便利な術があるなら、移動のときに使えよ」


大介が欠伸を噛み殺しながら洗面所へ向かうと、後ろから「禁術なので詠唱方は秘匿されてるんです」という、なんとも理屈っぽい反論が飛んできました。


二人の記念すべき「城」での初日の朝は、静寂とは程遠い、賑やかな喧騒と共に幕を開けたのでした。

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