3-34 自問
何か違うな、とエンドは思う。慌ただしい街を見て、困窮する子を見て、荒んだヒトを見て。
それは普段と領都の雰囲気が違うという事では無い。エンドは実のところそれらの惨状を悲しみ、同情し、共に涙を流そうという気持ちには到底ならなかった。エンドも木石では無いので近しい存在には好意を抱くし協力的ではある。しかし、自身でも所謂共感性といったものがあまり無いのでは無いかと考えていた。
そんな自身は一体何を望んでいるのか。金はあればあるだけ嬉しいが、何か違う。力があればあるだけ嬉しいが、それも何か違う。
ふと遠くを眺めたエンドが見つけたのは子供。周囲の目も状況も気にせず楽しそうに遊んでいる。
よく見ればそれだけでは無い。探せば見つけることのできたのは、通りを歩く豪奢で奇抜な格好の女性、街角を賑わす芸人、観客のいない音楽家。
心が惹かれた。
自身を省みる。丈夫な外套で身を隠し、仲間と呼べるものもいて、仕事は多少危険だがそれなりにこなしている。
「・・・何か、つまらんな。」
リンガが怪訝そうに独り言を言うエンドを見るが、エンドはますます一人ごちに考え込む。
避難民のキャンプ地に視線を移すと、リンガに尋ねる。
「この騒ぎが収まれば、皆元の場所に帰れるのかな?」
リンガは難しそうな顔になった。
「それは・・・どうかな?マナが無くなっちゃった土地はダメだろうし、マナが多い土地でも建物や畑とかが無事かな?あと、その、ヒトはこ、子供を作るときにプロマっていう木の実が必要になるけど・・・マナを多く持ってる木だから魔獣とかアンデッドが放っておかないと思う。種を植えたりしても時間かかるし、どっかから貰って植え替えるのはアリかも知らないけと。でも、今までより住みにくくなるのは間違いないかなぁ」
「・・・そうか。」
傍らの少女を見る。強く好感を抱いているし、情欲もある。命をかけることに戸惑いもない。しかし、己の全てを捧げられるかと思うと、何かがそれを否定している。この矛盾とも言える事に何か切っ掛けがある気がした。
「ああ、そうか。」
エンドは胸のつかえが取れたような気がした。結局のところ、自身はどうしようもない屑であったのだ。他のヒトの為に尽くす事も出来ない、我慢できない癇癪持ちのガキと同じであった。
「なあ、相棒。」
「どうしたの?さっきからちょっと様子がおかしいけど?」
「私は自重をやめようと思う。」
「えっ!自重してたの!?」
「エエッ!?」
エンドの台詞にリンガと、そしてくっついているシッコですら驚きの声を上げた。
「ふむ?その反応は心外だが・・・もうすぐ今日の仕事も終わる。あとは帰ってから話すとしよう。」
何処となく晴れやかで、そして何処か違うものを見ているかの様な様子のエンドに、リンガは一抹の不安を感じつつも頷くのであった。




