3-31 集合
会議室にぎゅうぎゅうに詰まった探索者達の前に少佐であるリンレイが立つ。その後ろにはランファの姿や片腕を三角巾で吊ったキャンプ地の指揮をとっていた大尉の姿もあった。
探索者達にもそれなりに横のつながりはある。ホール探索の仕事で知己が傷ついたり亡くなった者もおり、雰囲気はあまり良くは無かった。
「諸君!この未曾有の事態にあたり、領都に住む者は一致団結して対応しなければならない!光栄にも諸君らも映えある軍の一員となる。その事を胸に刻み、規律ある行動と責任を心掛けて貰いたい!」
力強い演説ではあるが、聞いているものの士気は上がらない。しかしながら明確な反抗は豚箱送りにされる事も知っているため表立ってその意を示す者は少なかった。
ドアを乱暴に開けて外に出て行った者もいたが、リンレイがハンドシグナルを送ると何人かの軍人が静かに出ていく。廊下で騒がしい音が暫し聞こえ、悲鳴が上がると静かになった。
腕を組んで会議室の前にいるタツキも額に皺を寄せる。
その後も話は続くが、詰まるところは探索者達を小隊単位に分けてそのとりまとめの指揮官として軍人が入り、その指示に従うようにというものであった。
軍の指揮下にある証としての腕章が配られる。
既に難民と言える者達が集まって来ており領都内でも避難所が複数作られている。だが万全な体勢をとっていた訳ではなく食糧やマナの配給も現在のところ賄えているが十分とは言えないものであった。
当然問題を起こすものもおり、貧困者や避難者にスラム等から擦り寄る者も出てくる。常に訓練をしており最大の戦力を外に集中させる為にもある程度荒事に慣れた人員でトラブルに対処する必要があった。
他にも領都を目指して散り散りにやってくる避難民、全員が真っ直ぐに来るわけでは無く道に迷う者もいる。さらに戦い慣れていない者は魔獣にとっても格好の餌となる。それらのヒトビトを探して保護するにも数が必要であった。勿論軍人も動くのではあるが、それは特に男性を含む避難グループを厚く保護するために多く振り分けられた。
男性は力が弱く体力も少ない者が多く、加えて魔獣にとっては極上の餌にもなる。村や町にも魔獣に対応する為の者もいるし、ある程度の規模以上では駐屯する軍人もいたが避難するにあたり謂わば足手纏いとなる存在を守りつつ移動する事は困難でもあった。
これらは一例であり、単純な哨戒や簡単な伝令、そして軍人達をすり抜けて来た敵に対する遊撃としても期待されていた。
軍にとってもこの大規模な災害に対して満点の対応をできる筈もなく、高度の柔軟性で臨機応変に対応するような形になるだろうとリンレイは言葉を結んだ。
「要するに行き当たりばったりってことか・・・」
どこからか小さく聞こえた言葉にリンレイは睨みを効かせるが、冷たい視線達と向き合う事になった。隣同士で話し合う声も多く、騒つきが収まらない。
あまりよろしく無い雰囲気の中、組合長であるタツキが手を叩いて注目を集める。
「テメェら!要は敵から軍の後ろや横を支えてやれって事だ!そして軍は敵じゃねぇ!外から襲ってくるヤツらや、内側から邪魔をするヤツらが敵だ。不平不満はそりゃあるだろうが諦めろ!ただし、あまりに理不尽な命令が出るようならオレに言え!!もう一度言う、敵を見誤るな!・・・軍にもこの事態を乗り切る為の誠意ある正しい対応を願う。如何かな?」
リンレイもアウェーな空気の中で不満気な表情を隠さなかったが、不承不承頷く。
一応は場は纏まり、タツキも監修して人員を振り分けていく。
受付のマギアン達もその整理に加わり、少し時間がかかったものの、体制が整っていった。




