表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/96

3-28 凶報

 リアエズの村に到着した一行であるが、軍の天幕はそのままに、しかしその代表である少佐のリンレイの姿は無く、ただ小鬼族の下士官が一人落ち着かない様子で待っていた。また、先にキャンプから村に移された負傷者も様々な天幕の中に設置された簡易的なベッドの上に転がされており軽傷者が面倒を見ている様子であった。


「何?少佐はどうした?こちらの状況は伝わっていないのか!」


 大尉が厳しい表情で問いただすと、背筋を伸ばした下士官が答える。


「は、はっ!先に村まで戻ってきた者達から事情は聞いており大きな被害が出ている事も、危険性が高い事も承知されていました。しかし、それよりも更に大きな問題が発生し至急領都に戻られました!」


「・・・その問題とは何か」


「はっ!首都を含む極めて広範囲でマナ枯れが発生したとの事です!」

「は?・・・バカな事を言うなっ!」


「いいえ大尉!事実です!領都も状況の把握に時間がかかり現在早急に体勢を整えています。この村にも最低限の防備を残して直ちに帰還せよとの事です!」


 愕然とする大尉に下士官は自らの不安感を被せる様に怒鳴る様に報告する。その様子を見て少し冷静さを取り戻し、額を抑え暫し沈黙する大尉であったが、疲労の色をより強く出しながら答える。


「・・・分かった。この場を纏めたら直ぐに戻ろう。伝令ご苦労。」


「はっ!」


 この話は直ちに探索者達にも広がり皆動揺を隠せずに騒然とする。


「・・・死の波が来ますね」


 ランファの呟きにエンドがそれは何かと尋ねる。


「大規模なマナ枯れが発生すると、その地域のヒトはまずマナを求めて他の地域に逃げ出そうとします。しかし、元々マナが不足気味の集落や体調を崩している者が全員逃げ切れるわけではありません。さらにマナの乏しい場所ではただいるだけで気力や体力を奪われ続けます。健康なヒトでも逃げきれない方が多く出てきます。」


 随分と重い話だなと思いつつエンドは黙って頷き続きを促す。


「そうなるとマナが不足してアンデッドとなるヒトが発生します。理性を失って手近なヒトをマナを求めて襲い・・・それは混乱を更に助長します。また、影響はヒト以外にも魔獣や他の動物まで及びマナの十分な土地を目指して移動したり、それらもアンデッドとなりマナ枯れの生じた地域の周辺に住む集落に押し寄せて甚大な被害を与えますし。逃げ出したヒト達も押し寄せ、小さな集落では受け止めきれずに略奪も起こり得ます。そうなると大都市を目指してさらに近辺の集落のヒト達も押し寄せ、極めて大きな混乱が領都で想定されます。そして移動するヒトを追いかけて飢えた魔獣やアンデッドが襲来するでしょう。多くのヒトや動物が亡くなったりアンデッドになり、そしてその後は幽霊草が一面生い茂る地となります。」


「だから大きなマナ枯れは死の波とも呼ばれるんだ。東と北東の領都は他の場所に比べると首都に近い・・・とんでも無いことになるよ」


 ハート型の大陸のリゾトニアは首都から北東、東、南、西、北西にエリアが分かれ、北側は海となっている。リンガも表情を曇らせ、ランファも真剣な面持ちで頷く。

 

「注〜目〜!!」


 大尉が大きく声を上げると軍人達は駆け寄って並び、他の者達も話を止める。


「我々はこれから急ぎ領都に帰らねばならない。動かせない怪我人も複数いる以上、数人は村の護衛の為置いていくが、諸君らもなるべく早く領都に戻ってほしい!おそらくこの規模の災害だと戒厳令が出て諸君らにも国のルールに則り協力命令が出る事になるだろう!共に協力してこの未曾有の災難を乗り越えていこう!」


 勇ましくも高らかに告げる大尉だが、探索者側のテンションは疲労も重なり高く無い。そもそも規律に縛られたくない風来坊が多い為、それはひとしおだった。ある程度の数の探索者は混乱の少ない地域に向かうと考えられたが、一方で領都を本拠地にしている者も多く、不満ながらもそれなりの人数は戻らざるを得なかった。




 ランファも簡単に挨拶をすると大尉達と共に先行して領都に戻るため出立した。


「ガ族の、大変な事になったな。」


 カリラ達ラ族の面々がリンガに声を掛けた。シタラもエンドに話しかけており、キャンプ地で助けてもらった事について強く感謝をしている様子であった。


「君たちラ族はどうするの?」


「同朋が何人か拠点に残っているし、戻らざるを得まい。だが、我らが至玉は領都の南の方にある都市に知己がいるので安全が確保出来るまでは避難させようと思う。」


「そうか。ボク達は仲間がいるし早く領都に戻ろうと思う。ボクもアイボーは安全なとこに行ってほしいけど、それは望まないだろうね。」


「ふむ、中々の奇特な御仁だな。」


「まーね、だから一緒に探索者なんてやってるんだけどさぁ・・・」


 リンガは苦笑いを浮かべてどうしようもない、といった様子であった。


「我々は怪我を負っている者もいるためもう少し後から戻る。互いの無事を祈ろう・・・ああ、あとこれは我らの拠点の住所だ、何かあれば力になろう。」


 リンガも居住場所の住所を教えると、エンド達と合流して軍人達の後を追う様にリアエズの村を出るのであった。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ