3-27 撤退
ランファはエンド達に近寄り声を掛ける。
「お二人とも、先程はありがとうございました。」
「いや、あの大物を仕留めたのは貴方だ。こちらこそ礼を言うところだろう。」
「そうだね、あの特級を倒せなかったらもっと酷いことになってたよ・・・で?何か用があるんじゃ無いかな?」
ランファは申し訳なさそうな顔をしながらも行方不明の第一班の探索者の捜索を手伝って欲しいと告げる。手練れのリンガと、特に危険を避けつつも探すためにエンドの索敵能力を欲していた。
「お疲れのところ申し訳無いのですが・・・」
「うむ、では早速行こう。」
「うわっ!」
エンドは即決すると、リンガを抱えながら立ち上がる。
「アイボー!も、もうマナもらって大分動けるようになったから大丈夫だよ!」
「む、そうか。それは喜ばしいが、残念だな。」
ランファは仲睦まじげに見える二人の様子を何処か羨ましげに見つめる。
エンドが領都に馴染み、仕事をこなしていくに連れて門や街中で顔を見合わせる事も何度もあった。
その際には会話をする機会もあり、ランファが非番の時、リンガ付きではあるが共に食事をしたりすることもあった。
一応は尉官であるランファは実のところ望めば上街で男性と触れ合う機会、その様な店に行く機会も作れたのだが、生来の真面目な気質のせいか気になりつつも中々手を伸ばす機会が無かった。
そこにエンドという規格外が現れ、なんと初対面でその裸体を見る機会があってからは、必然的についつい目で追う対象となってしまっていた。
少しの間思考の渦に呑まれていたランファだが、任務を思い出すと考えをリセットするかのように小さく首を振り雑念を払う。
「私の他にもう一人軍属を出します。いえ、それくらいしか出せないとも言えます、ここの防備も必要ですので。探索者の中でまだ体力の残っていて引き受けてくれる方がいれば良いのですが・・・」
ふむ、とエンドは顎に手を当てるとラ族の面々が集まっている所にカリラの顔を認め、声を掛けに向かう。
快く迎えてくれたが、事情を話すと少し難しそうな顔となった。
「む、同業者を助けんとするその心意気は見事だと思う。だが、我々は片付けを終えたら我らが至玉を早く追いたい。ホールがこれほど多いとは異常だ。不足の事態に備えたい・・・だが、貴方達は我らが至玉を助けてくれたと聞く。それに男性を危険に晒すことも我らがクランの名折れ、数名は出そう。」
「有難い。マナの補充は必要であれば行おう。ああ、望めばこの場にいる全員が対象だ。」
「なんと!それは助かるが、貴方の負担が大きいのでは無いか?」
男性であろうとマナを意図的に作り出す行為は体力や精神力を削るのが一般的であり、カリラは心配そうな声を掛ける。
「ああ、うん。ウチのアイボーは体力自慢だから大丈夫だよ。いや、ホントに。」
はっはっはと笑うエンドと呆れたような様子のリンガを見たカリラはふっと笑う。
「これから至玉を追う者達は合流したらマナを得られるから不要だ。だが、負傷者と貴方達に同行する者にはお願いしよう。」
エンドとしては本当に問題はなかったのではあるが、カリラの気遣いを無碍にするのも憚られたためその条件で合意した。
ランファに人手が加わった事を告げると、手早く準備を整え早速出立する事となる。猶予期間はこのキャンプから本隊が撤退するまで、明日まで猶予はあるが、救出対象が散り散りに逃げていた場合は探すのに時間がかかる可能性もあった。
エンドはその索敵能力を遺憾なく発揮し、大型の魔獣を避け、ヒトと思わしき気配を探る。生き残りの探索者はやはり広くバラけていたが、それでも屋外の活動に慣れている者達でもあって怪我人は多かったもののかなりの人数を見つけ出す事が出来た。
エンド以外が疲労の色を強くした一行はキャンプ地に戻って泥の様に眠り、早朝から再び捜索に向かう。
体力の回復した他の探索者達も加わり、最終的にエンドが探知できるだけの行方不明者を収容できだが、その数は居なくなった半数以上に達した。
とはいえ負傷者や衰弱した物が多く、有り合わせの素材で担架のようなものが作られて運ばれていく。当初の活気溢れる様子からすれば、それは悲惨なものであった。
幸運にも新たな襲撃を受けることもなくリアエズの村まで帰還する事が出来たが、そこで知らされたのは新たな、そして比べられない程の悪い知らせであった。




