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3-25 激戦

 エンド達は前線まで走りながらも意見を交わしていく。


「多分オーラウェポン以外は大きなダメージを与えられないと思う。あの隊長さんは左腕を痛めているし、ランファはボク達とホールを見に行っているしマナが減っているんだ。」


「うむ、つまりランファ嬢にマナを補給出来れば良いのだな。」


「うん。ボクも時間を稼ぐよ。あ、そうだ。さっきの黒いインクのやつってまだあるなら頂戴。」


「分かった。無茶はしないでくれ。」


「うん。最初から全開でいくから後でマナの補給をお願いすると思う。シッコもアイボーをお願い。」


「お安いご用だ。」

「オーケーボス!」


 エンドが黒い染料の入ったボムの弾を渡すと受け取ったリンガはエンドから離れて力強く駆け出す。


「援護するっ!」

 

 戦っている軍人達に聞こえるように声を上げながら特級の牛型に近づく。牛型が機敏な動きでその顔を向けるが、リンガはニヤリと笑いそれ以上近づくこと無くエンドから受け取った染料の入ったボムを投げつける。

 それは頭の真ん中に当たることはなかったが角の根元付近に当たって黒い染料が飛び散った。

 魔石が汚れた牛型は首を振ったり地面に擦り付けてその汚れを落とそうとするが、中々上手くいかない。

 その隙にリンガは小鬼の特性を発揮して姿を眩ませるとランファの側まで移動して声をかける。


「後ろにアイボーがいる!マナを貰ってきて!少しの間なら時間を稼ぐ!」


 ランファは驚いたものの頷く。三つ目族の特性は同族間のテレパシーであり、他の軍人や探索者の同族から現状の戦況は把握していた。全体的には好転しているが、それは目前の最大の脅威が抑えられていることが前提でもあった。


「・・・他の軍人も良いですか?」


 ランファは他の三つ目族の軍人もマナが不足して満足に戦えない状態に陥っている者がいる事もテレパシーで知っていた。しかし、この問いはエンドが男性であるとバレる危険性を孕むものであり、その確認を含むものであった。


「・・・いいよ!ボクのアイボーならそんな事気にしないだろうしね!」


 リンガは心中複雑であったが、現在の状況と、そしてエンドの性格を理解していた。


「感謝します、直ぐに戻ります!」


 ランファは身を翻すと膝をつく軍人を担ぎ後方に走る。それを見届ける事もなく、リンガは時間を稼ぐためにマナの残量も考えずに姿を眩ませながら暴れる牛型に急接近すると、死角から力を込めてその脚の関節に大鉈を叩き込む。


「ブモッ!?」


 傷は殆どつくことは無かったが、それでもガクッと曲がった足はバランスを取ることが出来ずに牛型が倒れ込む。

 リンガは牛型の腹を蹴飛ばし反動で素早く後ろに下がり距離をとる。

 大尉が隙を見逃さずにオーラウェポンの軍刀で切り掛かかり胴体に裂傷が走るが、左腕を負傷しており片腕では深くは入らなかった。怒れる牛型が身体を起こして角を振り回すと下がって攻撃をかわし、首筋に突きを入れるが動き回るその身体の芯を捉えられずに浅く刺さって傷をつけるに留まった。


 近づくランファ達にエンドは手を挙げてその存在を示す。


「状況は分かっている。マナを強く注ぎ込むから、済まないが耐えてくれ。」


「分かりました、お願いします。こちらの仲間もマナがあればまだ戦える筈です。」


「承知した。」


 息も荒く、焦点の合わない目でそのやり取りを見ていた軍人が力なく尋ねる。


「し、少尉、このヒトは?」


「・・・マナを沢山貯めて分ける余裕があるヒトです。それだけ分かっていれば良い・・・うひゃあっ!」

「ひぎゃっ・・・」


 ランファは注がれるマナに身を捩りそうになるが、目を強く瞑りその快楽にも似た衝撃に耐える。エンドは同時にもう一人の軍人にも別の手からマナを流していたが、其方は白目を剥いて震えながらほぼ意識を失っている様子であった。


 その間にも牛型は体勢を立て直すと怒りを込めて縦横無尽に暴れ回る。リンガも軽業師のように立ち振る舞いちょっかいをかけては離脱し、大尉も隙を見つけては切り掛かる。浅い傷でも数があれば無尽蔵にも見える牛型の体力を削る役に立っていた。

 他の軍人達や探索者達も次々と攻撃を仕掛ける。しかし時折牛型の攻撃を受けて大きく跳ね飛ばされ、倒れ込む者も出ていた。


「あっ、んっ、は、はぁはぁ。あ、ありがとうございます。これだけマナがあればオーラウェポンを十二分に使えます!・・・貴方も起きなさいっ!」


 ランファにビンタされた軍人はバンッと大きな音を立てると小さな悲鳴をあげて目を覚ました。


「はっ!か、顔が痛い!?」


「体調は回復しましたか?」


「あ、はい。マナがかなり溜まっていますね。あ!こんなにマナを貰って大丈夫でしたか?」


「ああ、問題無い。私は戦うのが得意ではないから後は心苦しいが任せてもいいかね?」


「はい!こんなにマナをもらいましたし休んでいて下さい!」

「ええ、ありがとうございました。行きますよ。」


 ランファはエンドが男性であると露見しなかったことに安堵しつつ、活力を取り戻して前線まで駆けていった。


 前線では戦闘可能な人数を減らしつつもなんとか牛型を押し留めていた。

 ランファが戻って来た事を確認したリンガは隙を作るために再度攻撃を仕掛けるが、牛型もその動きに慣れてきたのか軽くいなし、カウンターのように大きな身体をぶつけるとリンガは弾丸のような勢いで弾き飛ばされ離れた場所に転がる。

 マナを回復した軍人がランファに先行して肉薄すると、オーラを全力で込めてその腹を蹴り上げて地面からその巨体を浮かす。

 オーラウェポンの軍刀を輝かせてその腹部を加速した勢いのままに突き立て、深く刺さったそれに力を込めて振り抜く。


「モゴオオオ!?」


 深手を負った牛型は倒れて脚ぎ狂ったように空を掻く。さらにその傷口から大尉がオーラウェポンや突き立て、重要な内蔵を貫いたのか牛型は大きく身体を震わせると力無くその動きを止めた。




 


 





 

 

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