3-13 血痕
道中マナが少ない地域を通る必要があったものの、マナの補給には事欠かない面々である。簀巻きで引き摺られている一名以外は多少の不快感はあったものの特に問題は生じていなかった。そのまま順調に進んでいた一行であったが、先行する小鬼が何かを見つけ足を止める。
そこにあったのは血痕と服や装備の切れ端であった。
カリラも呼ばれて現場を見ると、顔を険しくする。
「そう時間は経って居ない、それにこのバッジは・・・同業者か。装備からすると二人組という所だな。マナが足りなくなった所を魔獣に襲われたか。」
視線を遠くに向けていたエンドもシタラを降ろし近くの小鬼に託すと、リンガとシッコを伴いカリラに近づく。
「今いいかね?少し離れた茂みにかなりの数の魔獣がいる気配がする。それも、中型種の群れで小型種も引き連れている様だ。」
「集合場所には軍が先行している筈だが・・・その後にこの辺りに来た群れか、若しくはマナの少ない地を通った後の弱った様子を見て襲ったのか・・・」
主だった面々が集まり今後の対応について話す。周囲を警戒する小鬼達も通常以上に緊張感を露わにしていた。
「この道は同じ仕事の探索者もこれから通るだろう。それに、この先の村人も全く通らない訳では無い筈だ。対応は必要だが、先行した軍に知らせるか、それともーーー我々が駆除するか。」
「ヒトの血を覚えた魔獣は絶対にまたヒトを襲いますね、マナが比較的豊富で死んでしまえば肉体の強度も下がるヒトの血肉は魔獣にとってはご馳走様となります。」
「もう少し詳細な情報を集めたいけど・・・」
この集団の主体はラ族のクランである事は明らかであり、船頭多くして船山登ることとならぬ様にリンガとエンドは沈黙を保っていた。しかし、その間もエンドは目を閉じて遠くの気配を細かく探る。
エンドが瞼を開けるのを見て、リンガが状況を小声で聞く。そして頷くと、手を軽く叩いて注目を集めた。
「アイボーがもう少し詳しい状況が分かったって言っている。確約はしないけど基本的にボクたちはキミたちの決めた事に従うつもりだ、先ずは聞いてほしい。」
エンドが一歩前に進み、話す。
「私はある程度気配の質もわかるが、ここから北北東30分くらいの所に、おそらくハウンドが10匹、ファングが40匹程集まっている場所がある。このまま道を進んでいてもだいぶ距離は近づく事になる。他に散発的な気配はあるが、大きな魔獣の気配は近辺には感じられない。」
エンドの言葉に面々はさらに難しい顔をするが、それでもマナを潤沢に使える集団の戦闘力は高く、エンドの言う通りの戦力であれば負ける事は無いだろうと確信していた。
しかし、エンドの話すその内容が必ずしも正しいのか怪しむ者もまた居た。
リンガは不機嫌そうな口調ながら、言う事は言ったし後はそっちで判断してと追加で告げるとエンドを伴って少し下がり口を閉ざした。
話し合いは暫し続いたが、最終的な結論をカリラが纏める。
「やるぞ。後回しにしてもこのまま進めばあちらから襲ってくる可能性もある。金にもならない仕事で面白くは無いが、我々であればハウンドを倒す事は造作ないしイレギュラーがあっても油断しなければ問題なく戦える筈だ・・・同業者の慰霊にもなるだろう。」
不満を持つ者も少しは居たが、それでも集団の意見には従う様子であった。
「結論が出たならば、私が先導して案内しよう。気付かれても私なら敵の動きからすぐに分かる。」
エンドの申し出に、男性を危険に晒す可能性を考えたカリラは難色を示しそうになったが、エンドの堂々とした様子とそれを当たり前の様にしているリンガの様子を見て、頷くのであった。




