3-12 女子会
野営地にて、エンドとシタラが談笑しているのを邪魔しないようにリンガとカリラが離れた場所から見守っていた。
「我らが至玉があれだけ楽しそうなのは久方ぶりだ。最初は警戒したが、今は貴方達と友誼を深めることが出来て良かったと思う。」
カリラの言葉にリンガも頷いて返す。
「ウチのアイボーも男性と話せる機会は殆ど無いからね、こっちも良かった。」
「うん。しかし、貴方の相棒は探索者の仕事をしていて大丈夫なのか?危険な事も多いと思うが・・・」
リンガは頭を掻きながら答える。
「まー、そう思うよね。ボクも最初は上街に保護を求める様に勧めたんだけどさ、本人がそれを頑固に望まなくて一人でも自由にやるって言うんだ。体力はホントに凄くあるし、力も男にしては格別だよ。マギアを使ってその辺りも少しは補っているし、中型の魔獣なら撃退までは出来ると思う。」
「それ程か!確かに鍛えられた良い身体をしていたが・・・しかし突然の行為には驚いた、疑った我々が悪いのだが。」
エンドが裸体を晒したことを思い出し、リンガが苦く笑う。
「・・・何かと理由をつけて脱ぎたがる悪いクセがあるんだ、ホント、困るんだアレ。いいヤツだしホント戦闘以外は探索者に向いていると思う。気配の察知とかも凄いし夜の番も任せられる。多分、今夜も立候補してくると思う。あんまり寝なくてもいい種族みたいだしね」
リンガの顔はパチパチとはぜる焚き火を受けて赤か見えたが、その赤さは火だけでは無かったのだろう。
「・・・なるほど、いい関係の様だ。しかし羨ましい物だな、今地、男性一人を少ない女性で囲うのは難しい。我々も交代で至玉を抱いているが、正直頻度が少なくてな。」
「なっ!?」
さらりとカリラが話すが、リンガは顔を真っ赤にして戸惑いの声を上げた。
「ん?何か私が変な事を言ったか?・・・まさか、まだ、してないのか!?」
無言で頷くリンガを驚きの表情で見ていたカリラだが、ふと何かに気がついた様子だった。
「なるほど、同族の様な小型種の可愛い男性が好みなのか。ならば仕方がないが・・・至玉は許さぬぞ。」
「違う!・・・その、ボクは大きいヒトの方が、好みだから。」
大まかにこの世界のヒトは小型、中型、大型の種族に分けられ、同じような体格を好む者が多く同種間で婚姻する者が多いのは事実ではある。しかし、当たり前ながら好みは千差万別、一定の割合で好みが異なる者も存在し、それに対する理解も寛容であった。さらに、見た目だけが全てでは無いため内面的なものを好んだり、単純に近くにいる男性が少ないため身近な者をいつの間にか好んでいる場合もあった。
「そうか、それならば彼が拒んでいるのか?我々の至玉は小鬼族でありその性質も含めて理解してくれているが・・・」
「い、いや、拒んでいるというか、むしろ誘われているというか・・・一緒に遊んだり、寝たり、風呂にも入ったりはしているんだけど・・・」
「はぁ!?待て、まさか男性から言ってくるのを待っている訳では無いよな!?それは流石にキツいぞ!?」
「うぐっ・・・いや、でも何と言うか、タイミングとか、万一断られたらさぁ」
「貴様角ついてるのか!?」
カリラは激高した様に罵声を浴びせ、如何に今の状況が神がかっているかを伝える。
涙目のリンガであったが、遠目にエンドが誰かと話している姿を見つける。
そして、エンドに飛び掛かろうとしたのを見て表情を消し駆け寄ろうとしたが、寸前で止まる。
その様子を見たカリラも目線を向けると、ツインテールの小鬼、メガラがシッコに止められているのを見つけて表情を固くした。
「・・・アイツ、何?」
冷たい声で呟くリンガを宥める様にカリラが声をかける。
「重ね重ね済まない、アイツは我らが至玉の妹に当たるのだ。怒りは尤もだが、何かあれば至玉が悲しむ、許してほしい・・・おそらく兄を性的な対象とは出来ないので溜まっていた上に、おそらく大きな男性が好みと自分でも初めて感じ暴走しているのだろう。罰は与える、というか既に吊るして火で炙り始めたな。」
リンガはギュッと目を閉じると、瞼を開けて力を抜く。
「エンドに出来た男友達を悲しませるのは、出来ない。腹は凄く立つけど、我慢するよ。」
カリラは深く頭を下げて謝意を示した。
夜も更けて火の番以外は交代で休みを取る。エンドもリンガと共にその役割を果たしていると、リンガが無言でエンドの膝の上に座る。エンドも何も言わずに右手で軽く抱き、リンガは背をその身体に預けた。特にそれ以上何かある訳では無かったが、それは十分に安らげる時間であることに間違い無かった。
人数が多かったせいか魔獣の襲撃も無く朝を迎え、各々出発の準備を始める。旅慣れた面々でありそう時間はかからずに野営地を出るが、煤まみれのメガラは簀巻きにされてカリラに引き摺られていた。シタラもエンドによって早く移動することが出来、想定よりもかなり早く集合場所へと着きそうであった。




