3-49 目覚め
「知っている天井だ。」
目を開けたエンドが呟く。そこはコニイの家、自身のベッドから見る見慣れた景色であった。
「アイボー!!」
ベッドの側に居たであろうリンガが涙目で目を覚ましたエンドに抱きつく。少し身体を起こしていたエンドは再びベッドに沈んだ。
「よ、良かった!やっと目を覚ました!ぐすっ、心配させやがってさぁ」
エンドは回り始めた頭で記憶を辿ると、朧気ながら倒れる前の事を思い出す。
「ふむ、状況はどうなった?」
「ぐすっ、領都は無事だよ。シッコが早く目覚めてボクたちを家に連れて帰ってくれたんだ。でもまず自分の心配をしろよ!二日間も寝続けていたんだよ?体は大丈夫?」
矢継ぎ早に話すリンガの頭をエンドはあやす様に撫でると、抱えたまま身を起こす。身体の芯にはまだ灼けるような熱が残っているが、通常の活動には大きな問題は無さそうであった。
「うむ、概ね問題なさそうだ。心配をかけたな。ところでシッコは真っ二つにされていたし相棒もかなり攻撃を受けていたが大丈夫かな?」
「シッコは核が無事だったし、出来るだけ切られた方の身体も回収したらしいから少し小さくなったくらいだよ。ボクの方も本調子じゃないけどマナがこれだけあれば治りも早いし普通に動く分には大丈夫。」
「うむ、それは重畳だ。さて、起きてコニイ達にも挨拶をせねばなるまい。」
起き上がったエンドであったが、リンガが蝉のようにそのままくっ付いている。
優しくゆかにおろそうとしたが、さらに強く抱きつかれる。
「相棒?」
「・・・やだ。このまま。」
エンドは小さく首を振ると、そのままドアを開け部屋を出る。
そこにはコニイ、シッコ、アイリスといった同居人の顔があった。
「ご主人、守れなくてごめんなさイ。身体はもう大丈夫かナ?」
最初に一割ほど体積を減らしたシッコが頭を下げて謝る。
「顔を上げてくれ。もう問題無いし、そもそも私の我儘に付き合わせて君を危ない目に合わせてしまった。詫びるなら私の方だ。そちらこそ問題無いか?」
「うン、切られたのが横で良かったヨ!縦だったら角に当たって危なかったネ。マナは沢山あるからまたすぐに大きくなるヨ!」
「そうか、ならば良かった・・・ドクも心配を掛けたようだ、済まないな。」
「まあねぇ、ただリンガの慌てようが凄かったから反対に冷静になれたというかな・・・うん、リンガはまだ駄目だね。暫くは我慢したまえ。何にせよ無事で何よりだ。助手君がとんでもないことをしたのは聞いているが、興味深いからまた君の口からも聞かせてくれ。」
引っ付いたままのリンガを見て苦笑しながらコニイもエンドの様子を見て安心したようであった。
「エンド様、先ずはずっと寝ていらしたのですから水分をお取り下さい。消化に良い食事も用意しますので暫しお待ちを。」
アイリスがグラスに水を入れ差し出し、一礼してキッチンの方へと戻っていく。
「・・・ああ、ありがとう。」
感謝の意を伝えて水を飲むエンドであったが、実際のところそこまで喉が渇いていなかった。自身の体はオドからマナを作り、そしてそのマナを直接肉体に変換しているらしかった。これに気がついたのはごく最近、あの夢の後であったが、元々空腹を覚える事はあまり無かったし、無尽蔵に近い体力もこれに起因していたのだろうと考える。極論食事や水分を取らずとも活動が可能であるとさえ確信していた。
しかしながら幸いな事に味覚もあるし食事も問題無く出来る。必要があまり無いが便所で排泄さえ意識をすれば可能であった。
少しすると粥のようなものが湯気を立てて出される。穀物由来の甘味が少しだけあるそれをゆっくりと食べる。塩気が少し効いたそれをエンドはとても旨く感じた。




