3-47 駄弁
「うーん・・・ってうわぁ!!」
前線のとある兵士が最初に目覚めると、その周囲の光景に愕然とする。
誰しもが倒れており、これは皆全滅したのかと背筋が冷たくなったが、アンデッドの姿も無いことに気がつく。
そして近くに倒れている同僚もその胸が呼吸で動いており生きている様子だったことに胸を撫で下ろす。
身体は奇妙な程マナに溢れており、倒れていた時間もあってひどく好調であった。しかし流石に起きているのが一人だけというのは不安であり、近くの者の肩を乱暴に揺らして起こす。
「おい!起きろ!」
「ん?んー、あれ?ええと」
「しっかりしろ!ここは戦場・・・だったとこ、だな。」
「あっ!!」
起こされた者も慌てて身を起こすが、周囲の状況に唖然とする。
「・・・一体何が?」
「私にも分からん。何かとんでもないマナを感じたと思ったらその後・・・そうだ。とても眩しかったんだ!」
「うん、凄い光があったな!そこまでしか覚えて無いけど・・・軍の新兵器かな?アンデッド達は全滅しているようだ、が・・・って何か動いてるぞ!!」
「マジで!?くそっ起きろー!」
一人が警戒し、もう一人が周囲の者を蹴る勢いで起こす。そうしてある程度の人数が揃うとゆっくりと警戒しつつアンデッドの屍の中で動く存在に近づいていく。
「・・・う、うあ、ここ、どこ?」
「う、嘘だろ?いや、とりあえず助けるぞ!集まれ!」
アンデッドの屍の中、グールまで進行してしまったものは二度と動く事はなかったが、ゾンビの一部は正気を取り戻していた。通常はそこまで進行すれば助かる事はなかった筈であったが、これは兵士達を大いに驚かせた。
次々と目覚めた兵士達は困惑しながらも負傷兵の救護や新たに生じた救助対象者の保護に奔走する事となった。
城壁近くのマナを補給する地点においても兵士達が目を覚ましていた。前線の兵士達と異なり、銀仮面と呼ばれていた者が兇刃に倒れ、そして何故か復活し、さらに何故か全裸となって強烈なマナを撒き散らした事を目撃した者をたちであった。
当選、目覚めてその姿をすぐに探したが、何処にも見当たらなかった。
「あれ、夢じゃないよね?」
「うん、その筈だよ。身体のマナも物凄く溜まってるし。でも、なんだろうねこの状況・・・現実とは思えない。」
訪れた危機が唐突に解決され、さらに戦闘すら終わってしまっていた。あまりの状況に肩透かしを喰らった気分となっていた。
だが危機が過ぎ去り気を抜けるようになったのも事実、明るい表情で雑談が始まり、そして軍という組織で雑談の中でよく出る話題は古今東西所謂下ネタである。
「いやぁ、それにしてもいい身体してたね!とくにあの下半身のアレ、ヤバくね?」
「わかるわー、私小型種の方が好みだったけどアレ
は凄すぎたわ、性癖変わりそう。仮面とかフツーにとれてたけど顔も良い感じだったし。」
「ありゃあ忘れようとしても忘れられないな。一生のオカズになりそう。」
「だねー、あー実際に相手してくれないかなー金なら幾らでも払うから。」
「でもアレだけマナ出せるなら金とか儲け放題じゃん。」
「それなら玉の輿じゃね?玉だけにさぁ、はははっ」
「うわ寒っ!」
緊張感の無い話は新しい命令が届くまで続くのであった。
領都の中でも異様なマナを感じ、そして暴力的な光の洗礼を多くの者が受ける事となった。
「・・・再起動、完了ーーー異常なマナで主機構が一時的にシャットダウンしていたようですね。」
「・・・そのようです。マナの残量が100%となっています。異常な事態ですね。」
領都内にはマギアンが多く残っており、彼女達もまたマナによって活動を止めていたが、ほかの種族よりも比較的早く目覚めて周囲の状況を確認する。
周囲の者を起こして回っていたが、混乱して彷徨く人影を見つけ声を掛ける。
「どうされましたか?あぁ、男性の方でしたか。」
「どうしたもなにも無いだろ!みんな急に倒れて一体何があったんだよ!」
マギアンは男性を落ち着かせて話を聞くと、光が過ぎ去った後で護衛が全員倒れており慌てて逃げて来たという。
地理感も無く仮にも護衛として共に行動していた者を置いて逃げ出したという事に若干呆れつつも、現状の男性の立ち位置では仕方なしとも考える。しかし他の男性達も最初に逃げた者の様子を見て後を追うように四散したと聞き、眉を顰めた。
現在理由は不明ではあるがマナはこの領都に十二分行き渡っており所謂満腹な状態と考えられる。飢えておらず余裕があれば普段よりは安全かも知れないが、それでも攫われる危険があり保護が必要であった。再度見渡せば、マギアン以外の種族はまだ目覚めるまで時間がかかりそうでありーーーマギアン達は何かを相談して頷き合った。




