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第39話

第39話





西側でも「連続注入装置」の設置の続きを開始して3日。

俺達は予定していたポイント全ての設置を完了した。


下級ゴブリンの殲滅も同時にこなしていったお陰で、俺のレベルは3、クリスのレベルも1上がった。



内訳は、こうだ。


「周辺探査」 Lv4 → Lv5   


ハイポリゴン範囲が半径6mに拡大。

カスタムは保留中。



「ストック」 Lv3 → Lv4


カスタムはインベントリ枠を減らして動作範囲を増加。

ストック範囲は15mとなった。

これで「座標固定」は15mまで届く。



「吸収」 Lv2 → Lv3


吸収効率がさらにアップした。

カスタムは保留中だ。


  

「フィルター」 Lv3 → Lv4


カスタムはフィルター作動範囲を削って、同時発動数を増加。

最終的に同時発動4となった。

ゴブリン魔石の回収が非常にスムーズ。



「射出」 Lv3 → Lv4


「座標固定」で削った射程距離は元に戻り、20mに。

最大速度で射出できる質量も増えた。 ……危険度も増えた。

カスタムは保留中。



種族レベルは一気に3レベルアップ。


種族レベル Lv15 → Lv18

最大ENG 33,500 → 53,000


上限減少


「魔力粘着」    50

「セバス」  1,000

「魔力鎧」  3,500

「魔力鞭」 12,000


計 16,550


上限減少後の最大ENG 36,450


最大BP 3,400 → 5,350   


ステータスポイント 3


オリジナルスキル取得まであと2ポイント。



…………。


もうね。


カスタムとか考えるのが、だんだん面倒くさくなってくるレベルだ。


「ストック」の距離は「射出」の強化に直結するのでインベントリ容量より優先し、フィルターは発動距離より同時発動を優先した。

そしてスキルレベルが軒並み上がったおかげで、種族レベルも連動して上がった。


ENGの伸び率よ。

あれほど重いと感じた「魔力鞭」のコストも霞む勢いだ。


というかちょっと思ったんだけど、セバスだけじゃなくシステムのスキル担当者も俺のENG見てオリジナルスキルのコスト決めてないか!?


……まあ良いか。


クリスはもう魔力鎧無し、デバフ無しでロード級ゴブリン2体同時相手に、一度も後退することなく訓練が出来るまでになっている。

糧にしろと言った俺が呆れるレベルで成長してる。


本人が全然納得してないのが怖い。

クリスさん俺の存在価値、無くなってませんか?


そしていよいよ女王級ゴブリン討伐軍本体が到着した。

広場にレッドキャップが複数出るのを待ち構えている状態だ。


状況を書いたレポートを再び城門に縫い付け、俺達は西側の城壁の上から広場を見下ろしていた。



広場で俺達がする作業はもう無い。



……作業は、無い。





(クリス。)


(…………。)



「スコープ」が広場西側に単独で出現してる「帽子」を映し出している。


帽子の飾りは三角錐。


新顔だな。

識別名は「三角」だ。



(いいぞ、クリス。)


(イチロウ……。)


(短い時間だったが、俺達は多くのものを積み上げた。 勝負できるカードは、ある。)


(私の……我儘だよ?)


(ああ。)


(イチロウは、もうこの要塞から脱出しても大丈夫だと思う。)


(知ってる。)


(勝てるとは、限らないよ?)


(問題ない。 離脱する用意もちゃんと出来てる。)


(イチロウ。)


(うん?)


(ありがとう。)


(お互い様だ。)



魔力鎧を纏ったクリスは、城壁から広場に飛び降りた。

彼女より先に地面に到達した魔力鞭が、衝撃を吸収する。


ふわりと着地。

「三角」に向かって歩き始める。


下級ゴブリンの排除は俺の役目だ。

近寄ろうとしたものは高速で頭に飛来する、こぶし大の石で即死する。


毒を使うまでも無い。

15m以内に近づけると思うなよ。


BPを上限突破状態へ。

ゴブリンの魔石は、溢れるほどある。



「三角」が気付いた。


ニヤリと笑った気がした。


30mまで近づいた時「三角」が消えた。

15m先に出現。


「座標固定」を奴に付けた。



(イチロウ。)


(どうした?)


(最初は私にやらせて。)


(…………分かった。)



仕方ない。

座標固定はそのまま。


ヤバそうなら手出しさせてもらう。

クリスは全く力まずに、自然体で短剣を両手に持ってる。

「三角」は右手に持ってるだけだ。



そして「三角」が、


消えた。



スルリ。


クリスが左に、ズレた。


キン!


現れた「三角」が放った一撃は、クリスの右の短剣で受け流された。


彼女はそのまま「双牙・風来」を発動。

脇を抜けたかに見えた斬撃と衝撃波はしかし、飛び退る「三角」には届かなかった。


「三角」から笑みが消えた。



(呼び込みが、足らなかったわ。 態勢を崩せなかった。)



クリスはふーと息を吐きながら、言った。


すぅ、と前に出る。

ヘビの様にS字を描いて「三角」に接近。


向こうは凄まじい勢いで突進してくる。



ボッ! ボッ!


空気を切り裂くような、踏み込みながらの「三角」の2連続攻撃。

それをクリスは一撃目は右に躱し、二撃目を左の短剣で、受け流そうとして失敗した。



「三角」がタイミングをずらした。


俺のBPが2500程減り、クリスは左腕を切断された。



クリスのBPは一切減っていない。


BPは、「痛みを無効化できるアーマー値」だ。

例え腕を切り落とされても、BPが残っていればクリスは痛みを感じない。


そして減ったのは俺のBPだ。



「魔力鞭」の機能の1つ。


BPの肩代わり。



クリスのBPが減れば、1時間で1/24回復の時間回復だ。

俺のBPは違う。


莫大なENGと引き換えに、即時回復が可能だ。


しかし痛みは無くとも出血はするので止血は必要だ。

心理的負担も大きい。


切り落とされた腕は上級ポーションがあれば、問題なく繋がる。

それを行う間、敵がじっと待ってくれれば。


だがな。


彼女の左腕が短剣ごと、彼方へ切り飛ばされる?

そんな訳ないだろう。



切断された後も「魔力鞭」で支えられた左腕はその位置をキープ。

即座に「グレーターヒールLv6」を投入。



切断された腕は0.3秒で元通りとなる。

同時に減ったBPを補充。



俺が考案し、機能を盛り込んだオリジナルスキルは想定通りの役目を果たしてくれた。


盾と短剣も準備だけはしておこう。



クリスがするりと右に移動。


手ごたえがあったはずの一撃が相手に何のダメージも与えていない事に困惑して、「三角」は飛び退った。



(やっぱり早い。 切られちゃった。)


(問題ない。 「三角」と遊んでやれ。)



クリスは苦笑して(そんな余裕ないわよ)とぼやいた。



「三角」が消える。


次の瞬間クリスの3m先やや右側でいきなり空中に出てきた椅子にぶち当たって姿を現し、ゴロンと後ろに転がった。

すかさず椅子を「ストック」で回収。


座標固定射出、成功。



(見えたか?)


(うん。 右だったね。 何となくわかる。)


(見る機会は何度でも作る。)


(分かった。)



手札はたっぷりある。


さあ、「三角」。


女王が作り出した近衛級ゴブリン、「レッドキャップ」。


多くの騎士や冒険者を屠ってきた強者よ。


技を繰り出せ。


お前の速度も戦闘技術も。


その全てを、クリスの糧にする為に。



そして俺の糧に、する為に。




第39話 完



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