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第32話

第32話




次の日の夕方俺達はゴブリン退治を早めに切り上げ、秘密基地に戻って来た。

並行して持続注入装置の設置もチャレンジし、2か所の設置を完了。


範囲毒を手に入れた事で殲滅速度は飛躍的に上がり、俺のレベルは2、クリスのレベルが1上がった。

久々にレベルの上がったクリスのはしゃぎ様といったら、見てられなかった。


後で本人も悶絶してた。



そしてスキルレベルも上がった。


「フィルター」 Lv2 → Lv3


「射出」 Lv2 → Lv3


システムからの射出の推しが高すぎる。


フィルターのレベルアップは、周りからデバフ材料をかき集めている為か?

熟練度も抽出数とかでは無い気がするが、上がっているから良しとしよう。

体感できる効果は抽出範囲が広くなった事だ。


射出はさらに凶悪になった。

射程は20m、最大速度で投げれる重さは小石(大)の倍くらい。

弾丸になる石の補充は一からやり直した。


これが至近で頭に当たると、下級ゴブリンなら即死レベルだ。

連射速度も高くなったが、何よりびっくりしたのが「同時射出」。


違う目標に2発同時に出せる。

こんな方向にも伸びるのか。 殺意高すぎだろう!

範囲毒+2発同時はもはやゴブリン殺戮マシーンで、毒の持続注入装置の不要論ま出てきそうな勢いだ。


カスタムは2つ可能となったが、威力や射程、同時射出数を伸ばす変更はできない。

何をカスタムするのかイメージ出来ないので、そのままだ。


スキルレベルが上がったので、種族レベルももう一つ上がった。


現在は


種族レベル14

ENG 28,800(24,450)

BP 2,850


こうだ。


ENGは最早クリス・モード、じゃない魔力鎧のコストすら問題にならなくなってきた。

俺は一体何処へ向かってるんだ。


ステータスポイントは4、つまり次の「オリジナルスキル」の取得が見えてきた。

正直今これが絶対必要というものは、無い。


いや、一つあるにはある。

だが「必要」ではなく「欲しい」だ。


光認識(人間)


今の俺の世界は、すべてポリゴンだ。

クリスの顔の形は分かる。


だが本当の意味で、おれはクリスを見た事が、無い。

取得が可能なのは、最初の「オリジナルスキル」の時に確認済だ。


「人間の目でクリスを見てみたい。」


それは彼女に出会ってから、日に日に大きくなってくる、俺の欲望だ。


しかし「オリジナルスキル」は強力な切り札だ。

置かれた状況をひっくり返すだけのポテンシャルがある。


気軽には、取れない。

少なくとも、この要塞の攻略を終えるまでは。


様々な検証とクリスとの打ち合わせを終え、18時に俺達は人族班との「情報共有」へと出発した。




目指すは西側の城壁だ。

2階経由の方が近かったが危険度が高いため、1階の正面出口から出て向かう。


城壁内には広くは無いが人が行き来出来るスペースがあり、そこが彼らの拠点である事は昨日のうちから判明していた。

向こうは多分こちらの動きを知らない。

セバスの機能で光が必要ないクリスは、完全無灯火で行動しているからな。


「調べる君」で地形を把握。


人族班は……いた。

一部が崩れて広場が見渡せる小部屋を拠点としている。

タープを張って光が漏れないようにしていた。



人数は6名、全員男性だ。

車座になってテーブルと小さな椅子を出している。


テーブルにはランプが4つ光っている。

丁度食事中だ。


一人食事内容が豪華なのがいるな? 指揮官か?

話をせず、黙々と食べている。

意外と言っては失礼だが、綺麗な食べ方だ。


よし、クリスの立ち位置はここだ。 

崩れた壁から斜め上にあるでっぱり。

人が2人くらい立てそうなスペースだ。


そこに移動。

魔力鎧解除。

クリスが俺の体にちょんと触る。


落ちないよに気を付けろクリス。

俺は単独で小部屋の裏に回りこんだ。

体は大きくなったが、変形できるので狭いスペースでも余裕で移動できる。


おっと、「魔力糸」があった。

人族班が警戒網を構築している。


だが、「無印」と同じく地上からの侵攻を想定したやつだ。

天井を這う俺を感知することは出来ない。

位置を調整、よし、ここだ。


(位置に着いた。)


(コピー。)


(セバス、やってくれ。)


(了解致しました、旦那様。)


ここから俺は、ステルスモードだ。



6人がぴたりと食事を停止した。


「念話要請!?」


一人が叫んで、あわてて口を閉じた。

しばらく目で会話、いや念話で会話してるのか?


(……誰だ? 私をオッドリー男爵家当主、オッドリー・ノバンと知っての念話要請か?)


男の声が聞こえた。 貴族か。

まあ「王国」だし、いるか。


(失礼いたしました。 潜入B班のクリステリアです。)


(亜人班か……貴族への念話の手続きも知らんとは。 まあいい。 それで? 何の用だ?)


(トラブルはありましたが、東側については予定通り終了する見込みです。)


(トラブル?)


(…………レッドキャプに遭遇。 複数名が死亡しました。)


(……ふん、撤退すらまともに出来んとは、レベルの低さが窺い知れるというものだ。)


我慢だぞ、クリス。 我慢だ。


(申し訳ございません。)


(まあいい、広場の東は方は予定通りだな? 女王の位置は?)


(そちらはまだ……。)


(ちっ、使えん奴だ。 女王の位置が判明したら直ぐに知らせろ。 いいな?)


(かしこまりました。)


(よし、下がれ。 俺は忙しい。)


(は。)



情報交換のつもりで来たが、ただの報告になってしまった。

仕方ないか。

話し合いが、出来る相手とは思えない。


念話を終了して男達が食事を再開しようとした時、城壁の内側でゴブリンの騒ぎ声が大きくなった。

6人が気を取られ、一人が崩れた壁に様子を見に行く。


今だ!


奴らが置いている大きなリュックを「ストック」。

インベントリに入った荷物に集中。


「リスト」


中身がずらっとリストに上がる。

これぞ新発見機能、 「リスト」。


バッグ等をインベントリに入れた後、中身を取り出せるのだ。

これを発見した時は感動したし、何で思い浮かばなかったのだろうと頭も抱えた。


細かい作業が出来る「手」は無いが、こうした入れ物に関してはアプローチが可能になったのは大きい。

奴らのリュックから高級食材っぽい物をささっと別のインベントリの枠に移し替える。


全部は取らない。 四分の一位だ。

ワインもいっとこう。

治療薬?ごちになります!


荷物1つ終了!元に戻す。

合計4つの荷物から、ごっそりと食料と薬を移し替えた。


しかしまあ何ですな。

俺のスキル。


本当に禄でもないスキルばっかだな!



慎重に、しかし素早く離脱。

もちろん外のゴブリン騒ぎも俺達の仕込みだ。


クリスに合流。

魔力鎧モードで離脱した。



(クリス。 その……、)


俺は彼女にどう声を掛けるか迷った。


(イチロウ! どうだった? 良いのいっぱい、取れた?)


(…………。)


なんとか男爵との会話で気が滅入っていると思いきや、食料の事で頭が一杯な様子のクリスに、俺は掛ける言葉が見つからなかった。




第32話  完






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