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第2話

第2話




本格的に動く前に自分の能力、というか出来ることを確認しておきたい。


まずは「ステータス」だ。



★ステータス


名前:未定

種族:ケイブスライム

レベル:4


ENG:498/500

BP:100/100

状態:通常


ステータスポイント:4



ふむ。


ぱっと見て分かりそうなのと、そうでないものがある。

ENGにBPって何だ?

HP(生命値:ヒットポイント)とかじゃないの?


説明は無いのか、説明は。

そう思ってカーソルを合わせる感じで、各項目に集中した。



ENG:エネルギー


活動等に使用されるエネルギーよ。

0にはしないことをオ・ス・ス・メ♪



説明はこんな風に出た。


……何だこの説明文は。

まず説明担当者を変えようか。

根拠は無いが、何となくオネエが喋ってる感じだ。



いや、別に悪いわけじゃない。

完全に、俺個人の好みの問題だ。

……俺は誰に言い訳してるんだ。



ENGは活動等に使われるエネルギー、か。

アバウトすぎるぞ。


498/500


2減ってる。

減った原因は何だ?

勿体ない気がしたが、検証の為にもう一度「周辺探査」を使ってみる。


ENGがさらに1減った。


なるほど。


「周辺探査」は使用するのにコストが掛かるわけか。

2減ってるのはスキルの使用以外に、俺が動いたりジャンプした時に消費されたのか?


「吸収」と「フィルター」は使う対象が見つからず。

「ストック」はインベントリ、つまり所有枠にアイテムを出し入れするスキルらしい。


1つインベントリに入れるのにENGが1減った。

ここでコストが掛かるのか。


インベントリに入れた小石を出そうとした時、

俺は誰かに「投げてみろ」と言われた気がした。


その言葉に従うと小石は音もなく体の表面から射出され、

そのまま探査範囲の外へ消えていった。



出す時に投げることもできるのか。


投げる速度はそれほど早くなく、同時にENGは1減った。

意識してみると、「投げる」だけではない。


体のすぐ横へ「置く」。

あるいは体の表面から少しだけ「出す」。


そんな操作もできそうな感覚がある。

これらを組み合わせれば、ある程度の物体は自由に動かせそうだ。


思った以上に応用が利きそうだ。



しかし「ストック」はアイテムを出し入れするだけで、ENGを合計2消費する。

これは結構重いコストなのでは?



インベントリの枠は5つ。


少ない。


だが各スキルには「Lv1」、恐らく「レベル1」の表記がある。


レベルがある。

つまり成長する余地がある。


「ストック」のレベルが上がれば、インベントリの枠も増えるのか?



そこまで考えた時、ポリゴンで表された白黒の風景がすうっと薄れていった。



輪郭がぼやけ、


地形が消え、


何も見えなくなり、暗闇になった。



世界が、消えた。



——っ!?



心拍数が跳ね上がった。


気がした。

心臓の鼓動は、この体には無かった。


…………。


なんて不便な体だ!


いや実害は、ない。

しかし体の部位を使った表現が、日本語には多すぎる!

全部「いや、無かった」って、言わないといけないのか!?


もう良い。

あると仮定して使ってやる。


異論は認めない。

俺しか居ないけどな!



突っ込みで息が荒くなりながら、俺は再び「周辺探査」を使った。


すると、消えていた「視界」が、一瞬で戻ってきた。

なるほど、時間制限があるという訳か。

大体5分位。


脅かしやがって。

よし、次はBPだ。



BP:バリアポイント


人間ならBPが残っている間は痛みを直接感じることは殆ど無いから、

ダメージはBPの範囲内で抑えておくこと。

お姉さんとの約束よ♪



安定のオネエだ。


BPがあるうちは、痛みを感じない。

そんな不思議機能があるのか。


逆にこっちの攻撃でも、相手が怯まない可能性がある訳か。


……スライムの攻撃って、どうやるんだ?


体当たり。

ジャンプして踏み潰し。

或いはさっきの小石投げ?


うーむ。


自分より大きい相手には、どれも通用しなさそうだぞ。


そして最初の一言。


「人間なら」


何でわざわざこれが書いてある?


知っているのか?

この状況を作り出した連中は。


俺が人間の体じゃない事に。


不思議と怒りは込み上げなかった。

むしろ少し安心した。


ここまで説明を用意しているという事は、

少なくとも何も分からないまま、理不尽に終わらせるつもりは無いという事だろう。


「乗り越えてみろ。与えられたものを使って。」


そんな無言の挑戦状を、突き付けられているような気がした。



あとはステータスポイントか。


レベル4で未使用ポイントが4。

1レベルで1ポイント付与される計算だ。


そもそも何故初めからレベルが4なんだろう?

日本での経験を反映して、レベル4からスタート?


このポイントで何が出来るんだ?

項目に集中してみる。



ステータスポイント: 1ポイント使用ごとにENGもしくはBPの最大値を増やす事が出来るわ。

使わずに貯めることで、何か良い事が起こるかも♪ こうご期待よ!



オネエにも慣れてきた。


予想を外れない使い方だったが、1ポイントでどれだけ増えるかは書いていない。

思わず試してみたくなるが、貯めると良い事というのも気になる。

今は保留だな。


もう一度ENGを見てみる。

ふと疑問に思った。



……無くなると、どうなるんだ?


スキルは、使えなくなるか。


「周辺探査」や「ストック」は出来ないな。

「吸収」と「フィルター」は不明だ。


確認する必要が——



……待てよ。


待ってくれ。



ENGが0になったら、

そもそもスキル以前に、動けるのか?


生命活動が、出来るのか?



おい!


「ENGの回復」


これはどうやるんだ!?


動かなければ時間経過で、自然回復するのか!?



俺は動きを止め、スキルを使わずじっと待った。

ENGの数値を見つめる。



数分経った後ENGの数値が、



1、減った。



体の中を、根源的な恐怖が駆け抜ける。

時間で回復するどころか、減った。



つまりこうだ。


ENGはスキル使用で減る。

そして時間経過でも、減る。



……ENGはタイマーだ。



俺が死ぬまでの。



いや、

死ねたらまだ良い。


動けず、スキルも使えないのに、

意識だけが残ったら……。



背中にじわりと汗が滲んだ。


背中なんて無いし、汗も出てない、

体はさらさらのままだけど、出たんだよ!



暗闇が解決したと思ったら、これだ!

いや、解決はしていない。

手段が示されただけだ。


解決などしていないんだよ!


焦りが思考をかき乱す。

落ち着け、落ち着け。


ENGを回復させる手段は、ある筈だ。


小石に反応しなかった、「吸収」と「フィルター」に目を向けた。

ステータスでやったように、「吸収」にカーソルを合わせて、集中。



「吸収」:ENGを取り込んで回復する。



よし!

回復手段は、ある!


まずはENGを回復させる「何か」を見つける必要が、ある。

俺は白黒のポリゴンで構成された、周囲を見た。


「周辺探査」で探す必要が、ある。


そう考えた時、再び周囲の景色がゆっくりと薄れていった。

視界が消え、世界が消え、暗闇が訪れた。



水の流れる音が、俺の体を震わせる。



この世界で意識を取り戻してから、

俺はまだ2mすら進めていなかった。





第2話 完

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