↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
28/48

第27話

第27話




(どうだクリス?)


(よっ……と、行けたわ。 この先の十字路を東ね。 やっぱりすごいわ、これ)


東の山岳付近で魔力鎧の実戦投入に成功した俺たちはそのままゴブリン数グループを殲滅し、秘密基地で準備を整えた後、崩落した通路経由で要塞の2階に来ていた。


セバスが提供した俺の「周辺探査」一部共有機能は、暗闇でもクリスの目にポリゴンの地形をはっきり映し、「光源の必要性」を完全に克服している。

さらにミニマップも表示。 現在位置を俯瞰的に知る事が可能だ。


だが、俺のように結界による探査は出来ない。

暗闇の中対象を認識できるだけで、人間同様ちゃんと死角も存在する。


まあ人間だしね。

——え、俺は!?

……今は考えないでおこう。


単純にクリスが暗視機能を手に入れた、と考えた方が分かりやすい。

俺はこんな芸当が出来るセバスが少し怖くなったが、有用なので目を瞑る事にした。


追加で980もENG上限持って行きやがったけどな!

絶対増えたENG見てコスト決めてるだろう!


そして左上には時刻が表示されている。

クリスの持っていた時計とは同期済だ。


メッセージは今の所使っていない。

念話の有効範囲、30mを越えて別行動する時くらいか、使いそうなのは。



2階に上がってからしばらく南に行くと十字路だ。


(クリア。 GO。)


「調べる君」で先を調べ終えた俺の合図で、クリスは十字路を東に折れた。

彼女は左手と左足の先を壁に触れ、天井ギリギリを廊下と水平になって進んでいる。


スタイルは任せることにした。

色々探査をして来たが、「調べる」事に関しては、俺は素人同然だ。


特殊な訓練など受けて来てない、……と思う。

と、クリスはススーっと降下を始めた。


何だ?

高さ1m位で止まって、彼女は下を指差した。


(イチロウ、これを見て。)


??


(? 何も……いや。)


よく注意して見ると、廊下の高さ15cm位の位置にうっすらと線が見えた。

集中しないと「周辺探査」で感知できないレベルだ。

それが幅3mある廊下の端から端へ、少したわみながら繋がってる。


(これ、魔力糸だわ。)


(まりょくし?……糸か。 魔力で作った、糸か?)


(ええ、人間の警戒網の構築によく使われるの。 やり方は色々あるんだけど、これは単独。 誰かがこれを切ったら、通過した証拠になる。 近くに居たら感知できるわ。)


糸による侵入者探知。 鳴子を使ったトラップみたいなものか。

ん? 人間の警戒網?


(クリスの班が設置したのか? あるいは別の班?)


(いいえ、進入路にこんな物必要ないわ。 それにね……)


クリスは再び高度を上げると天井に張り付いた。



(構成魔力が人族のものじゃ無かった。)


(人間じゃない? お、俺じゃないぞ?)


(分かってるわよ……、そうじゃなくて。)


(……まさか、飾りなし「帽子」か? いや、呼びにくいな。 識別名は「無印」としよう。)


(「無印」ね、確かに呼びやすいわ。 貴方にしては良い名前だと思うわ。)


(……貴方にしては?)


(あっ!、ちょ、良い名前だと思うわ。 ええ! ええ!)


まあよかろう。



(つまり「無印」がこれを? ありうるのか?)


(ありえないから、驚いてるの。 魔力糸を使うゴブリンなんて、私が知る限り確認されていないわ。)


(つまり奴は「帽子」の中でも異常個体の可能性が高いのか。)


(間違いなく、そうね。 私たちの班は「無印」に遭遇したんじゃない。 向こうは確信をもって待ち構えていたのよ。)


クリスは頭を左右に振った。



(まさかゴブリンがこんな仕掛けをするなんて、想像もしてなかった。 私は今回アタッカーとして参加したんだけど、斥候で参加してもこれは気が付かなかったと思うわ。)


(俺は全く気が付かなかった。 という事は、2階の探査を全部やった時に、侵入者の存在に気付かれたかもしれないな。)


(探査の時、貴方一度でも廊下近くまで降りた?)


(……してないな。 全部天井近くだった。)


(なら大丈夫だと思うわ。 見つけたのはまだ一つだけど、これは「地上を歩いて」侵攻してくる敵を想定して作られてる。)


クリスはそっと右手で背中の俺に触れた。



(私の班が、「無印」の警戒網を想像していなかったと同様に、向こうも立体移動で警戒網を無視できる貴方を、想定なんかしていないわ。)


ちょん、と俺の体をつついた。


(そして「私たち」も、ね。)


やばい。

戦ってる時もそう思ったけど、クリスがめっちゃ頼もしい。

そして男前!

付いて行きますぜ、姐御!


十字路を抜けてドームへ。

俺がが敢えて回収しなかった「バッグ」はまだ、ぽつんと残されていた。


(あれね、イチロウ?)


(ああ。)


クリスはふーっと長い息を吐いた。


(正解よ、魔力糸が張られてる。 取るのはもちろん、動かしても察知される。 バッグの回収、出来なくは無いけどしない方が良いわ。)


(…………。)


こっわ!

そしてナイス判断だ、俺!

こればっかりは、胸を張って自画自賛しても誰も文句を付けられないだろう!


(出入口にも張られてる。 侵入者を絶対見つけるという執念すら感じるわ。 うすら寒いわね。)


本当にそうだ。

「厨房」が無い2階を巡回しているだけでも、普通ではないのだ。

他の帽子とは「目標が違う」のではと思いたくなるくらい、行動が異質だ。


ドームの南出入口から廊下に出る。

5つほど部屋を過ぎて、目的の扉が見えた。


(よし、大丈夫ね。 扉に仕掛けは無いわ。)


部屋の直前で地上に降り、そっとドアノブを回してドアを開ける。

クリス班が注油していたのか、思いのほかドアは軽く内側に開いた。

がらんどうの部屋だが、唯一左側に金属製のベッドのフレームがあり、そこに古びた布が被せてある。


クリスは慎重に進みながらそれをめくった。

大きめのリュックサックが2つ、置いてある。


彼女はしばらく動かなかった。


黙ったまま荷物を見つめるクリスの表情を、俺は探査の意識からそっと外した。




第27話 完






 


うーん、行間はこっちの方が見やすい、かな?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。