第23話
第23話
外に出た俺は、新たな決意を胸に「スポット」を1匹のゴブリンに固定した。
これで霧状探査の範囲外に出ても、行動を追える。
よし。
デバフを選ぼうとしたその時、そのゴブリンの頭の上に白い三角マークがピコンと付いた。
!?
ちょっと待て、これマーキング機能か!
いつの間にこんな機能追加されたんだ。
最近展開が急で考察が追い付かないよ!
何となく消化不良だが、有用なのでオーケーとするか。
今一番欲しい、まである機能だ。
気を取り直して、「ディジーズLv2」を「射出」スキルにセット。
よーく狙って……って、照準が出た!
もういい、ありのままを受け入れよう。
狙って、……射出!
物理的では無い何かが飛んで行って、40mほど先のゴブリンに命中することなく、10m位飛んで地面に落ちた。
………………。
ああああああああああ! そうだった!
この「射出」スキル、そんなに距離飛ばないんだ!
石を射出した時もそうだった!
無駄にカッコつけて北口から出てきたけど、そもそもデバフが届かない!
うわぁどうしよう。
クリスじゃないけど前提が崩れた!
地面に降りて近づくのは流石に危険だ。
いまの速度と「ワープ」があれば、逃げ切れるとは思うが。
せめて壁があれば……。
壁か。
「スポット」を東の城壁に向ける。
城壁のすぐ下には、小屋というより、タープのような構造物がずらりと並んでいる。
いいね。
ついでに東側もちゃんと見ておきたい。
俺はマークが付いたゴブリンから、マークを外した。
しかし、思い直して再び付けた。
そのまま建物の外壁を東に向かって移動。
200m程離れた所で、マークが消えた。
これが有効範囲か。
スルスルというよりシューンと移動。 快適だ。
東側の山岳地帯で別件の検証用に、適当な大きさの石を仕入れておく。
東側の城壁へ。
ゴブリンの密度が多すぎず、少なすぎない場所を選ぶ。
眼下にゴブリンの寝床だろうか、タープが並んでいる所に着いた。
よし。
深呼吸を一つ。
ふー。
呼吸は無いが、雰囲気は大事だ。
タープの外を歩いている一匹のゴブリン。
距離は10m。
マーク。
照準。
ゴブリンは立ち止まって何かを見始めた。
「ディジーズLv2」 射出!
それは音もたてずに飛んでいき、ゴブリンに吸い込まれた。
よし。
反応は何もない。
だがそれは予想通りだ。
魚も反応が無かった。
次だ。
そのまま他のゴブリンにマーク。
マークは複数出来るな?
形は変えられるだろう?
……いや、「数字」を付けられるはずだ。
おれはスキルに問うた。
初めゴブリンのマークに「1」
次のゴブリンに「2」と付いた。
いい子だ!スキル担当!
「2」には「ポイズンLv2」を。
「3」に「グレーターポイズンLv2」を。
それぞれ「射出」した。
「ニューロトキシンLv3」×5は使わない。
使えないといった方が正しい。
こいつは毒に侵されたクリスから抽出された効果だ。
つまり次いつ取れるか分からない「レア抽出物」なのだ。
気軽に実験に投入出来ない。
そしてこの「ニューロトキシンLv3」
なんと「ディジーズLv2」及び「ポイズンLv2」そして「グレーターポイズンLv2」の3つと合成可能だった。
だが合成は、まだしていない。
1つだけやっても良いかと思ったが、踏ん切りがつかなかった。
インベントリの枠がかなり埋まってきたのもある。
2分ほどして変化があった。
マークの「3」だ。
「グレーターポイズンLv2」を付与されたゴブリンが膝をつき、電池切れの様に倒れた。
…………。
その時俺の心に沸き上がった感情は、うまく表現できない。
真横から見上げた巨人。
上から見下ろした巨人。
スライムを踏み潰した。
投げて、喰った。
その巨人を俺はあっけない程簡単に、殺せた。
命を、奪い取った。
達成感、爽快感、罪悪感。
そして、恐怖。
それらが入り混じって、俺の背筋を登っていった。
…………ふう。
俺は感傷を振り払った。
確かな事は一つだ。
「俺は強くならねばならない」
その為に、ここに居るんだ。
左上に表示が出ていた。
ゴブリン撃破
種族レベルアップ Lv6 → Lv7
ステータスポイント 2
ステータスは
ENG:2,000(1,930) → 3,500(3,430)
BP:250 → 400
……すごいな。
えげつない上がり方をしている。
クリスには聞きづらかったが、人間とのステータスの比較はする必要があるな。
そしてステータスポイント。
あと3ポイント、つまりあと3レベル上がれば5ポイントとなり、オリジナルスキルが取得可能となる。
体の大きさは、変化なし。
安堵したような、残念なような、複雑な気分だ。
マークの「1」と「2」は変化がない。
デバフの効果は出てるんだろうが、見た目からは分からない。
うーむ。
いやしかし、通じることは分かったのだ。
「グレーターポイズンLv2」なら下級ゴブリンを2分で倒せる。
騒がせず、静かにだ。
これ自体は喜ばしい。
……しかし。
2分か。
やはり面と向かっての直接対決は、かなり厳しい。
条件が合えば一方的だが、一旦それが崩れると、弱い。
壁などの優位な場所が無い所に行けないのは、同じだ。
上昇したBPで何度かは攻撃に耐えられるだろうが……。
水源への毒を回収できたとして、その設置と投入はクリスが単独で行う事になる。
今の俺がくっ付いて行っても、足手まといになる可能性が高い。
やはりあれか。
オリジナルスキル取得で一つ考えている事がある。
出来るかどうかは、取る時でないと分からない。
俺は手持ちの「グレーターポイズンLv2」20個を、どんどんゴブリンに付与していった。
薄い天幕の中にあるピンクの生体反応にも付与。
布を突き抜けてゴブリンに吸い込まれていった。
薄い壁には弾かれた。
しまった、ちょっと迂闊に使いすぎたな。
マークもどんどん付けていく。
20個で次が付かなくなったので、最大は20の様だ。
よし、次だ。
余り離れると、ゴブリンを倒した経験値が入らない可能性がある。
そう考え、おれはこの場で動かずに検証を続けた。
先程山岳地帯で取ってきた石。
大きさが異なる石を3種類
インベントリにはこう表示されている。
小石×5
小石(中)×5
小石(大)×5
こいつの検証だ。
今まで「射出Lv1」を何度か使い、気が付いたことがある。
まず「小石」をゴブリンが居ない所に「射出」する。
水平距離で10mほど飛んで落ちていった。
ENG消費は1。
次に「小石(中)」を「射出」。
初めの石の2倍位の大きさだ。
同じく水平距離で10mほど飛んで落ちていった。
ENG消費はやはり1。
そして、「小石(大)」。
小石なのに(大)とはこれ如何に。
そう意識して拾ったからか?
まあ良い。
大きさは初めの石の3倍位。
「射出」
石は、同じく水平距離で10mほど飛んで落ちていった。
ENG消費はやはり1だった。
予想はしていたが、目の前で起こるとその異常性に言葉が出なかった。
この「射出Lv1」というスキル。
「射出」される物の「質量」に関係なく、投げられる最大速度が同じだ。
力を入れて投げる、とかではない。
10m進む、という結果だけが決まっている感じだ。
これがいかに異常かは、物理を学んだ者なら分かるだろう。
石の質量が上がる度、運動エネルギーが跳ね上がる。
着弾した時の、威力が上がる。
ただし、「射出Lv1」で最大速度で投げられる重さは、ここが限界だった。
ストックではもっと重い物を出し入れできるが、「射出」すると距離はがた落ちする。
いや、自由落下で良いのなら、それも武器になるか。
この「射出Lv1」、スキルレベルを上げたらとんでもない事になるのではないか?
俺はその予感に震えた。
熟練度はどう上げるのだろう?
「射出した数」などという単純なものでは無い事は、何となく予想できる。
2分が経過し、バタバタとゴブリンが倒れていった。
感情を抑えながら、さらにデバフの合成を行なって「グレーターポイズンLv2」を作成する。
結局この日俺はレベル10を達成し、オリジナルスキルの獲得条件を満たした。
反撃の狼煙は、確かに上がった。
第23話 完




