第15話
第15話
俺は今自分が出てきた建造物の外側の壁を、上に向かってスルスルと移動していた。
1、この建造物の外観と大きさを把握する。
2、「周辺探査」の熟練度稼ぎ
目的はこの2つだ。
屋内は南部を除いてほとんどの部分をマッピングできたので、新たな範囲を開拓中だ。
出来れば比較的安全な所を移動出来る間に、レベルアップを果たしたい。
野外のゴブリンに対して「グレーターポイズン」等の使用を考えたが、中止した。
建造物の周囲は下り坂になっている。
そのせいか、奴らは基本あまり建造物の近くに居ないのだ。
直接探査出来る距離まで来るのは階段付近だが、範囲内に出たり入ったりする事も多い。
デバフを使用した個体のその後を、追いきれそうにないのだ。
ただ、何故建物内に入ってこないか、謎だ。
中と外で綺麗に行動が分かれてるのも、謎だ。
「帽子」の事が頭をよぎった。
だが、何か違う気がする。
「帽子」が統制役であることは間違いないだろう。
だが戦闘スキル全振りみたいな奴が、あの文化的な作業をさせているというのが想像できない。
広間の南側。
あそこにその答えがあるのだろうか……。
しばらく探査を続けると、建造物の全容が朧げながら見えてきた。
外壁は途中で段差になっている箇所が二つある。
恐らくそこから階が変わる、つまり少なくとも3階建てだ。
室内の階段は発見していない。
広間の南にあるのか?
或いは詳しく見ていない小部屋に階段が?
1階の上下幅がでかい、30m近くある。
幅はまだ分からない。
1階を探査範囲に入れつつ、2階部分を西側から調べていく。
途中から丸みを帯びていき、そのまま南側へ壁が続いている。
ん?
南に進むようになってしばらくすると、正面に人工物ではない自然の山肌が見えてきた。
なるほど。
山の斜面に張り付くように、建築されているのか。
「周辺探査」 レベルアップ Lv4 → Lv5
種族レベル アップ Lv5 → Lv6
ステータスポイント 1
来た。
移動は一時中止だ。
等価交換は——よし、ある。
このまま霧状範囲を広げるのは愚策だと考えていた。
もっと遠くを確認できる手段が必要だ。
「周辺探査」Lv2のカスタムで見送った、レーダー型。
MAP機能のある今なら、どうだ?
Lv4で追加された探査範囲をレーダ型にカスタム。
レーダーが一周、半径は200m。
少し動いてみる。
ズレは……無い!!
よしっ!
なら次は、こうだ。
板状のレーダーを、さらに絞る。
途中はもう線だ。
先端部のみに探査機能を集約、距離を極限まで伸ばす。
距離——1km。
これ以上は、無理か?
無理そうだ。
仕方ないか。
よし、作動。
今までのように周囲をまんべんなく探るのではなく、最大1km先の一点だけを探査する。
うお! ENGが減っていく。
秒間4くらい減るな。
オン/オフ切替は、当然できた。
探査ポイントを動かしていく。
探査可能なのは、遠距離の範囲10mだ。
それ自体は自由に動かせるが、先端部までの線状部分は探査が出来ない。
よし、この追加機能を「スポット」と名付けよう。
北へ移動しながらゴブリン料理を吸収してENGを補給する。
食っては「スポット」、食っては「スポット」。
そんな地味な作業を20分以上繰り返した。
…………。
そして俺は、自分がいる場所をある程度把握した。
建造物の周囲は幾つかの小さい建物の他はほとんどが広場であり、高い城壁にぐるりと周囲を囲まれていた。
南側のみが険しい山岳だ。
広場には溢れんばかりにゴブリンの姿があるが、一部少ない場所もある。
建造物の出入り口からまっ直ぐ北に大きな通りが、巨大な門まで続いている。
建造物は高台にそびえ立ち、坂の途中から水路が2本、大通りを挟むように城壁に向かって伸びていた。
所々に橋が架かっているが、崩れているものも多い。
城塞都市。
いや、都市にしては広場に建物の数が少なすぎる。
ここは「要塞」と呼ぶべき場所だ。
ゴブリンが作ったとは到底思えない。
城壁がある。
あそこにたどり着くには、山岳部から回って行けばそう難しくない。
だが、今のままでここから出てもその後は?
料理という高ENG回復手段と、壁や天井といった立体機動がある今の場所の方が、遥かに安全だ。
やはり自分の強化、か……。
ステータスのレベルアップは、
ENG:1,000(930) → 2,000(1,930)
カッコ内は魔力粘着の50とセバスの20、上限が削られた後の値だな。
そして、
BP:150 → 250
うーむ、上がり幅結構すごくないか?
レベル4からだと、
ENG:500 → 1,000 → 2,000
BP:100→150→250
という変化だ。
BPの250
これは、ゴブリンの踏み付けを耐えられる値なのだろうか?
6mの天井から落ちた減りが、5。
行ける気は、する。
検証したくは無いが。
今までスキルが上がると同時に種族レベルが上がっている。
3、だ。
スキルレベルが3上がるタイミングで種族レベルが上がった。
高い確率でこれらは連動してると考えて良いだろう。
スキルポイントは1
これは貯蓄一択だ。
5を貯めて、オリジナルスキルを取る。
体は今回大きくならなかった。
毎レベル、という訳では無さそうだ。
…………。
検証はここまでか。
実は気になる事が一つあった。
西側の山岳部に近い場所。
「周辺探査」のレベルアップ直前、崩れているところを発見していたのだ。
中に入れるかもしれない。
つまり2階部分の探索の入口になる可能性がある。
料理はまだたっぷりある。
(セバス。)
(お呼びでしょうか、旦那様。)
(駄洒落を一つ言え。)
(……アルミ缶の上にあるみかん。)
この世界にアルミ缶あるんだ!
(下らん。)
そう言いながら笑いを堪え切れず、口元を緩めたまま俺は前に進みだした。
第15話 完




