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第14話

第14話






大広間の西側に秘密基地がある訳だが、東側もよく似た構造だった。


ただ養殖池がなんと5つもあり、西側より東側の方がゴブリン達がせわしなく移動している。


西側と同じく、小部屋で生活している痕跡は無かった。


なんと広間で雑魚寝だ。


何でだ?



厨房。


これは東側にしかなかった。


エプロンはやはりというか料理長のシンボルマークらしく、別の個体がエプロンを付けて料理にいそしんでいた。


様子を見てみたが、違和感というレベルではなかった。


鍋に水とAとBとCを入れて煮た。


完成。



こんな感じだ。


調味料とか、食材を食べやすく切るとか、味を調えるとか。


そんな作業ゼロ。



どう考えてもあの長ったらしい名前の料理に、なるとは思えない。


書いてある食材も、全部は絶対入っていない。


それなのに不思議とENG回復量は驚異的だ。



これがゴブリン流なのか?


セバスに聞いてみたが、


(ゴブリンの作法は、存じ上げません。 旦那様はご存じなのですか?)


との有難い解答を頂いた。


俺だって知らないよ! だから聞いてんだよ!



まあ良い。


目立たぬよう少しだけ料理を拝借して、探査を進めた。



よし。


東側は一通り見た。


次は南北だが、これは考えるまでも無く北だ。


なぜなら南は、「帽子が去っていった方角」だからだ。


絶対近寄りたくない。


天井を北に移動しつつ、俺は合成について思いを巡らせた。




結局「グレーターポイズンLv2」 は10個作った。


出来上がったもの自体を材料にする事は出来なかった。


合成は今の所、ディジーズLv2+ポイズンLv2の組合せのみで作動。


料理同士の合成とかも面白そうだったが、出来なかった。



……グレーター、か。



普通に考えれば威力の高いポイズン。


しかしそれだけなら、ポイズンの高レベルと何が違うのか?


検証したいが、どうする?


いっそ眼下のゴブリン達に実験台になってもらうか?


効くかどうかだけでも、試してみるか?


積極的に攻撃された訳でもない相手に死ぬかもしれない、いや死ぬ事でしか効果が確かめられない手段を用いる事に、おれはまだ抵抗があった。


魚には使っちゃったけど。


ごめんよ。




北側には幅30mという部屋というより巨大な廊下が続いており、しばらく行くとざわざわとした雑多な音が入り混じった空間を行く先に感じた。


大きなアーチ状の出入り口、その先は……。



これ、建物の、外だ。



外!


間違いない、外だ!


出口だ!



屋内のような反射音が一切しない。


手探りで進み続けて、やっとここまでたどり着いた。


興奮して、しかし慎重におれはアーチの向こう側へ。




出た。




最初に感じたのは光の強さだ。


予想していたものより弱い。


今は、朝? いやこの感じ夕方か?


それなりに光は当たってる。 だが廊下から15mは高い位置に俺は居る。


たとえ見つかっても早々には……、




「ギィィィィ!」



つんざく悲鳴が俺の体をわずかに揺らした。


続いて何十体ものゴブリンが一斉に騒ぎ出したような声が前方から響いた。


「周辺探査」がその光景を映し出していく。



出口からは幅広の階段が緩やかに下に下っている。 


その半ばで20匹以上のゴブリンが騒いでいる。



背が低い。 100cmくらいか?


「帽子」よりさらに背の低いゴブリン達。


腰布一丁の姿、想像していたゴブリン像と一致する。




何匹かが倒れた一匹を取り囲み、座り込んでいる。


何をしている? 介抱か?


一匹がこちらの方向に顔を向けた。


口に何か咥えてる。


いびつな形の、ロープ?



いや。


違う。



喰ってる。


こいつ等は同族を、


喰ってる。



外側の何匹かは手に石を持ってる。


それを別のゴブリンに投げつけた。



意外にも石の方が砕けた。


いや、飛び散った?


何だ? 柔らかい?



まさか。


見覚えがある。


あれは、スライムだ。



スライムを投げつけて、ゲラゲラ笑ってる。


別の一匹はそのまま口に入れた。


地面に叩きつけている奴もいる。



そのうちつかみ合いが始まり、倒れた奴に周りが群がった。



その光景は、まさに地獄だった。



しばらく言葉が出なかった。


中の連中も乱闘にはなったが、ここまで野蛮じゃなかった。



何なんだ、これは。


何なんだ、ここは。



ふぅぅ……。



深い息を吐くと、俺は壁面を東に移動した。


とりあえず、これ以上北に進むのは無理だ。



周辺探査60mでも先が見えない。


音からは北側はかなり広い空間である事が感じられるが、地上に降りて向かう気には到底ならなかった。



移動中もザワザワとした環境音や、甲高い叫び声が聞こえる。


空中にはカラス位の大きさの鳥が舞っている。



広い屋外に、大量のゴブリンの気配。


さっきの光景が一面に広がっている。


そんな風に想像できた。



200mほど進んでも状況は変わらず、俺はため息をついて引き返した。



くそ。


60mの探査範囲は屋内では抜群の性能だが、野外では「遠方が分からない」という弱点がモロに影響する。


どの方向に向かうかの指針が立たない。


壁が無ければ、地上に降りて進むしかない。


或いは川があれば、水中を行けるかもしれない。


地上を進むのは自殺行為だ。


水中も、外敵が居ないとは限らない。


存在が確認出来ない、壁を見つけるしかない。



連続した壁が無かったら?


適した川が無かったら?




終わりだ。



おれは一生ここで過ごすしかない。


屋内はまだ安全と言える。


料理もある。



「帽子」に気を付ければ。


いや。


あの池の底に沈んでいれば、「安全だけは」確保できる。



そう。


俺が今のままなら、そうだ。


俺は自分の能力が書いてあるウインドウに目を向けた。



……このままなら、そうなる。



このままなら。





14話 完



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